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糖尿病の運動療法ーなぜ必要なのか?
運動不足と糖尿病の関係皆さんの家のテレビのリモコンはどこにありますか?おそらくすぐ手の届く場所にあると思います。「運動不足」は「運んだり」「動いたり」「足を動かしたり」しない(=不)ことですが、...
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糖尿病の運動療法ーなぜ必要なのか?

公開日 2015 年 03 月 19 日 | 更新日 2017 年 05 月 07 日

糖尿病の運動療法ーなぜ必要なのか?
天川 淑宏 さん

東京医科大学八王子医療センター糖尿病・内分泌・代謝内科

天川 淑宏 さん

貴田岡 正史 先生

イムス三芳総合病院 内分泌内分泌(甲状腺)・代謝(糖尿病)センター長

貴田岡 正史 [監修]

菅野 一男 先生

医療法人社団桜一会かんの内科院長

菅野 一男 [監修]

運動不足と糖尿病の関係

皆さんの家のテレビのリモコンはどこにありますか? おそらくすぐ手の届く場所にあると思います。

「運動不足」は「運んだり」「動いたり」「足を動かしたり」しない(=不)ことですが、多くの方々がこれに当てはまると思います。テレビのリモコンは手指を使うだけで、足を動かさずとも、テレビを操作することが出来てしまいます。足を動かさなければ次第に筋肉は衰えていき、糖が利用されなくなってしまいます。利用されない糖は血液中に残ったり、内臓脂肪へと変わることでインスリン抵抗性が高まってしまうのです。

自動車の保有台数と糖尿病患者数を時系列で比較したデータがあります。自動車の保有台数の増加に伴って、糖尿病患者さんの数は増えています。自動車で移動するようになって、足を動かさなくなり、運動不足になる人が増えました。このことと糖尿病になる方が増えたことは、密接につながっているのです。

普段から歩数計を持っている方は、運動のときにどれだけ歩いたかだけではなく、日常生活の中でどれだけ歩いたのかを計りましょう。日常でも一日の活動の中で6,000歩/日未満であれば、身体活動が不足しているサインです。

糖尿病で運動療法が必要になる理由

体の中で、糖を代謝する一番大きな器官は筋肉ですが、筋肉は体重のどれくらいの割合を占めていると思いますか? 体脂肪は体重の約2割、水分は約2/3を占めると言われています。筋肉はどれくらいでしょうか?

骨格筋は体重の約50%を占めています。インスリンは血糖を下げる働きをするホルモンですが、筋肉はインスリンの標的臓器の中で、最大の血糖取り込み器官です。

インスリンは筋肉にシグナルを送り、糖を取り込むタンパク質(GLUT4)を活性化することで血糖値を下げます。糖尿病の患者さんはよく「だるい」と言いますが、これは血糖をきちんと筋肉に取り込めず代謝が出来ていないことが原因です。いくら良い車があっても、ガソリン(=血糖)がエンジン(=筋肉)に行きわたらないとうまく走れません。

運動療法の目的は、筋肉の糖の代謝を上げること

糖が血液中に流れてくると、インスリンが分泌されて、骨格筋の受容体に結合してシグナルを伝達します。シグナルが伝達されるとGLUT4という糖を輸送するタンパク質が細胞表面に移動して、血糖を筋肉の中に取り込みます。

GLUT4はインスリンのシグナル以外でも、運動そのもので活性化されて糖を取り込むことも知られています(非インスリンのシグナル)。たとえば最近ストレッチングが流行っていますが、有酸素運動により増殖したGLUT4の働きをストレッチングは促す働きをします。GLUT4の働きが促進されることでインスリンの感受性が高くなり、血糖を下げる効果をもたらします。つまり、運動は糖を消費するだけでなく、GLUT4を活性化してインスリンの感受性をよくするという意味合いがあるのです。運動がインスリン抵抗性を改善するというデータはたくさん出ています。

一方で、運動不足が慢性化した筋肉ではGLUT4が減少してしまうため、血糖の取り込みが減少してしまいます。この状態でインスリンが多く分泌されると、血糖値を下げることは出来るのですが、血糖を脂肪に蓄積してしまうことになり肥満の原因となります。

糖尿病の運動療法の目的は良質な筋肉を身につけて、筋肉における糖の代謝を上げることにあるのです。

運動療法の課題は「始められない」「続けられない」

面白いアンケート結果があります。糖尿病患者さんに「現在行っている治療は?」と質問するとほとんどの方が「薬物療法」「食事療法」と答えます。一方で「今後望ましいと思う治療方法は?」と聞くとほとんどの人が「運動療法」と答えるのです。2011年の健康日本フォーラムのアンケート結果です。

患者さんは「とりあえず1万歩目指してウォーキングをしよう」と考え始めますが、実際には運動をしようと思っても「時間がない」「ひざや腰が痛くてなかなか実行できない」「何度もチャレンジしたけれど食後歩くのは難しい」と言った理由で、運動療法を始められない、続けられないというのが現状です。

一人ひとりの状態にあった運動療法を

糖尿病の患者さん224人に、「日常生活や運動に支障となる痛み」の有無についてのアンケート調査を行いました。日常生活や運動に支障をきたすような何らかの痛みを持つ人が全体の約7割にいらっしゃいました。立ち上がるときや歩き始めのときに腰やひざに痛みを覚える患者さんが多くいらっしゃいました。

糖尿病はインスリンの作用の不足により、種々のメカニズムから骨密度の低下や骨の質低下を引き起こします。「サルコペニア」「変形性関節症」「骨粗しょう症」などの整形外科的な病気の原因となり、運動をしたくてもできないという状況を招いてしまうのです。

医師に求められるのは「なるべく多く歩くように」といった漠然とした指導でなく、患者さん個々の状態に合わせた運動療法です。動きたくなるココロや動けるカラダを維持することが、運動療法の目指すべきゴール。患者さんも、運動療法がむずかしいと感じたら、医師にどうすればよいか、より丁寧な指導を求めましょう。

 

糖尿病において運動療法は欠かせない。健康運動指導士、理学療法士など様々な視点を持ち、糖尿病の運動療法における第一人者の一人である。西東京臨床糖尿病研究会では評議員の一人として、運動療法をさらに発展させるべく活動している。

北多摩地域の中核病院である公立昭和病院の内分泌・代謝内科部長として地域に根差した糖尿病治療を実践。加えて、NPO法人西東京臨床糖尿病研究会理事長として、糖尿病治療情報の共有および治療標準化を目指して、専門医、開業医間のネットワークを構築、専門的知識を持つ人材の育成等の活動を行っている。

2008年4月1日に、三鷹駅南口に、糖尿病・内分泌疾患・内科専門の「かんの内科」を開設。東京医科歯科大学、武蔵野赤十字病院、糖尿病学会、内分泌学会などでの診療・活動を通じて培った経験を、糖尿病・高血圧症・高脂血症・甲状腺疾患・動脈硬化症(脳梗塞、狭心症・心筋梗塞、足壊疽)などで苦しんでいる患者さんの診療に役立てており、メタボリックシンドロームなどで明らかな症状のない方の動脈硬化を進ませないようにするためのアプローチにも重点をおいている。食事療法、運動療法を駆使し、必要に応じて最適な薬の選択を行い、元気に長く豊かな人生を楽しむためのサポートをするために経験豊富な専門医、専門看護師、管理栄養士、運動トレーナー、フットケア専門家が一体となっている。
内分泌専門医として、甲状腺疾患、下垂体・副腎疾患(原発性アルドステロン症、クッシング症候群、先端巨大症、プロラクチノーマ、尿崩症など)の診断・治療を行う。

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