インタビュー

高病原性鳥インフルエンザ:H5N1型について

高病原性鳥インフルエンザ:H5N1型について
岩田 健太郎 先生

神戸大学大学院医学研究科 感染治療学分野 教授

岩田 健太郎 先生

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この記事の最終更新は2015年05月20日です。

時折、鳥への感染が報道される「高病原性鳥インフルエンザ」。とにかく「よく分からない」というイメージがあります。実際にはどのような特徴があるのでしょうか? 神戸大学感染治療学教授の岩田健太郎先生に、高病原性鳥インフルエンザについてお聞きしました。

高病原性鳥インフルエンザとは、H5N1型のインフルエンザのことを指します。ヒト―ヒト感染はしないものの、非常に死亡率が高く、東南アジアで流行しています。死亡率が高いことの原因としては、普通のインフルエンザは上気道感染が中心なのに対して、下気道まで感染しやすく、肺炎を起こしやすいという特徴があります。また、これまで経験していないインフルエンザであるため免疫がまったくできていないことも、死亡率が高い原因として挙げられます。ただし、単純に流行国が途上国であるため、医療水準が低いこともその1つの要因としては考えられます。

先述したように、普通のインフルエンザは上気道症状中心ですが、高病原性鳥インフルエンザは下気道症状を伴いやすく、肺炎を起こしやすいのが特徴です。そのため重症化しやすく、死亡率も高くなります。

高病原性鳥インフルエンザについては、はっきりとした治療法が分かっておらず、コンセンサスもまったく得られていません。治験もありませんし、これからいろいろと試してみましょう、という状況です。ただし、死亡率の高いものにはありとあらゆるものを使うのが基本になります。このようなときにこそ、ペラミビル水和物なども使う可能性があります。

高病原性鳥インフルエンザにかかった後の生存期間は、先述したようにとても悪いです。普通の季節性インフルエンザとは比較できないくらい悪く、死亡率も高くなっています。

高病原性鳥インフルエンザのパンデミックについては、「可能性があると言えばある」というものです。この手の質問に対しては、可能性がないと言うことはできず、また正直なところ、その可能性がどれくらいあるのかも分かりません。過去に事例がないものに関しての未来予測というものは非常に難しいものです。とはいえ、全ての可能性を想定内にしておくべきですし、起きたら起きたでなんとかできるようにしておくべきです。

H5N1型インフルエンザに関してはインドネシア、カンボジアで流行しています。そのほかにもH7N7などを含めたさまざまなタイプのインフルエンザがオランダ、タイ、ベトナム、中国、台湾などの国で確認されていますし、アメリカ、ヨーロッパでも出ています。日本でもいつ出てもおかしくないといえます。日本に飛んでくる鳥の中にH5N1型が入っていることも時折あります。

高病原性鳥インフルエンザに対してどのように対応していくかという厚生労働省の計画は、すでに立っています。日本で鳥インフルエンザが出たときを想定した法律もできていて、指定感染症として扱っています。

ヒトに感染するインフルエンザの中で、従来にない抗原を持った新しいインフルエンザのことを「新型インフルエンザ」と呼んでいます。もともとは、トリやブタに感染していたインフルエンザウイルスがヒトへの感染性を獲得することが発端となっています。

ところで、よく日本ではこの「新型インフルエンザ」という言い方をします。しかし、2009年に大騒ぎになった新型インフルエンザ(ブタインフルエンザ)は、今ではもう季節性のインフルエンザになってしまいました。この時、世界では「パンデミックインフルエンザ」という言い方をされていたのに、日本でだけ「新型インフルエンザ」という言葉が使われていました。そもそも、いつか新型ではなくなるものに対して、新型インフルエンザという言葉を使ってしまうと、よく分からなくなってしまう危険があります。そのため、この記事ではあえて新型インフルエンザという言葉は使わずに、「高病原性鳥インフルエンザ:H5N1型」をテーマにしました。

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