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原発性アルドステロン症の手術と薬物治療―方針はどのようにして決める?
「原発性アルドステロン症」という病名に馴染みのある方は多くはないかもしれません。これは、かつてはあまり知られていなかった「副腎の腫瘍からアルドステロンというホルモンが大量に出てしまう」病気です。...
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原発性アルドステロン症の手術と薬物治療―方針はどのようにして決める?

公開日 2015 年 07 月 15 日 | 更新日 2018 年 04 月 16 日

原発性アルドステロン症の手術と薬物治療―方針はどのようにして決める?
西川 哲男 先生

横浜労災病院 名誉院長、西川クリニック 院長

西川 哲男 先生

原発性アルドステロン症」という病名に馴染みのある方は多くはないかもしれません。これは、かつてはあまり知られていなかった「副腎の腫瘍からアルドステロンというホルモンが大量に出てしまう」病気です。近年、この病気が高血圧の原因として非常に重要であることが分かってきました。
原発性アルドステロン症に関して臨床・研究ともに世界的な第一人者であり、日本の原発性アルドステロン症の診断治療ガイドライン委員長を務められた横浜労災病院院長・西川哲男先生に、この病気の治療についてお話をうかがいました。

原発性アルドステロン症の治療方針

副腎静脈サンプリングの検査で病変が片側だけだった場合

外科的治療(腹腔鏡下副腎切除術)を行います。

それにより、病変のある副腎を部分的に切除していきます。

副腎静脈サンプリングの検査で病変が両側にあった場合

内科的治療を行う医療施設が大半ですが、横浜労災病院では両側でも副腎の手術をすることがあります。 病変が両側にある場合、副腎不全を起こす可能性が高いために、原則的には手術を行いません。しかし、横浜労災病院では「超選択的な副腎静脈採血」という非常に精密な検査を実施することができます(東北大学などでも可能)。それにより、病理検査でのみ診断可能なマイクロアデノーマ、びまん性過形成といったCT陰性の小さな病変の存在も類推することができます。

そこで、若年治療抵抗性高血圧や挙児希望の女性ではCT陰性の両側病変であっても、両側副腎を部分切除することで、治療が可能な症例もあります。一方、CTにて副腎に結節病変を認める際は、超選択的な副腎静脈採血所見がその病変に一致してアルドステロンが高値で、かつ部分切除が手技的に可能な部位に存在する際は積極的に部分切除を行い、正常組織を温存しています。

女性の妊娠と出産

なお、両側の場合でも積極的に手術をするにはきちんとした理由があります。やはり、一生薬を飲むのは辛いからです。特に若い女性の場合、「妊娠中に薬を飲んでも大丈夫ですか?」という質問もあります

原発性アルドステロン症の方は、「スピロノラクトン」という利尿降圧剤などを飲まなくてはなりません。もし患者さんが妊婦の場合、おなかの中の赤ちゃんが男の子のときは特に、影響が出る可能性があります。また、原発性アルドステロン症では子癇(妊娠末期に、意識消失やけいれん発作などを起こすこと)や妊娠高血圧症候群のリスクが非常に高くなります。

ちなみに、私自身がみてきた患者さんのうちには、薬を飲みながら妊娠・出産した方が何人かいます。「妊娠したいけれど、どこでも治療してくれない」という患者さんを何人も治療してきました。そのような方々は、出産は無事に行えたけれど、やはりリスクは確実にあったと言えます。しかし、手術をしてしまえば安心して妊娠・出産に臨めます。両側性では部分切除をして、少しでもお薬を減らす状態で妊娠できることが好ましいです。

外科的な治療

外科的治療では、「腹腔鏡下副腎切除術」を行います。それにより、病変のある副腎を切除していきます。 横浜労災病院では同院の泌尿器科と連携し、「腹腔鏡下副腎部分切除手術」も行っています。これは、副腎のどこからアルドステロンが出ているのか、区域性が分からないと意味がない手術です。

残した部分にアルドステロンが出る部分がまだあったらどうするのかという心配もあり、かつてはあまり考えられていない外科的治療法のひとつでした。しかし横浜労災病院では超選択制の副腎静脈採血を実施することができるため(詳細は原発性アルドステロン症の検査と診断を参照)、マイクロアデノーマという非常に小さな腫瘍まで判別がつきます。その検査をもとにして、部分切除をすることができます。

手術の合併症は基本的に何もないと考えてよい

傷の感染が時々ある程度です。現在は単孔式(穴が一つ)のポートで手術を行うため、カメラも鉗子もそこから入れることができます。傷がヘソに隠れて分からなくなるほど小さいため、女性には大変喜ばれます。なお、横浜労災病院では、副腎をとったことによる副腎不全はまだ1度も起きていません。

治療の効果ー手術と内科的な治療

原発性アルドステロン症によって引き起こされる高血圧は、脳卒中・心筋梗塞の大きなリスクになります。治療をすることにより、それらを防ぐことができます。

手術をした場合

原発性アルドステロン症に伴う副腎の手術を行った後、多くの場合は高アルドステロン血症がなくなり、それに伴い高血圧も治ります。具体的には、60~70%程度の患者さんが完全に薬を飲まなくてよくなります。しかし、約30%の患者さんは手術後も血圧が正常に戻りません。これには、本態性高血圧や肥満が影響していると考えられています。

それでも、高アルドステロン血症はそれ自体が脳血管や心臓に悪い影響を及ぼすうえ、手術後に高血圧が残ったとしても使わなければいけない薬の量は減ることが知られているので、たとえ高血圧が治らない場合でも、早期の診断および外科的治療が有効です。

なお、手術後には一時的に腎機能が低下することがあります。また、手術後には今までしていた厳しい減塩やカリウムの過剰摂取をする必要はありません。

内科的な治療をした場合

  • 抗アルドステロン薬

スピロノラクトン、エプレレノンといった薬の服用が中心となります。

  • 降圧薬

Ca拮抗薬などの降圧薬を組み合わせていくことがあります。α―ブロッカーなどを使うこともあります。手術後であればARBという降圧薬も使用することがあります。

ただし、ほとんどの論文での結論は手術治療のほうが明らかに高血圧が改善することや、左室肥大の退縮率(高血圧で大きくなりすぎてしまった左心室が小さくなる)が良いことが知られているため、原発性アルドステロン症の治療としては手術を行うことが現在の主流であるといえるでしょう。

最も新しい治療法として、CTガイド下に電極を挿入して、焼灼術による病変部の高周波処置で焼いてしまう治療法で、現在(2018年1月時点)厚労省の許可を申請中です(東北大学放射線科)。

横浜市北東部の地域中核施設であり、650の病床を持つ大病院、横浜労災病院で2016年まで院長を務める。内分泌代謝内科学、特に原発性アルドステロン症では臨床・研究ともに世界的な第一人者であり、日本の原発性アルドステロン症の診断治療ガイドライン作製委員長を務めた。現在は名誉院長としての傍、自身が院長の西川クリニックを開業し多くの患者の診療に当たっている。

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