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インタビュー

ガンマナイフの適応疾患と治療方針

ガンマナイフの適応疾患と治療方針
周藤 高 先生

横浜労災病院 副院長・脳定位放射線治療センター長

周藤 高 先生

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この記事の最終更新は2015年08月17日です。

ガンマナイフによる治療は、どのような病気に対して有効なのでしょうか。真っ先に思い浮かべるのは転移性脳腫瘍(身体の他の部位にできたがんが脳に転移したケース)かもしれません。しかし、ガンマナイフ治療は脳神経外科領域のさまざまな疾患に適応があります。それぞれの治療の特徴について、横浜労災病院脳神経外科部長の周藤高先生にお話を伺いました。

ガンマナイフの適応になる疾患には、以下のものがあります。

身体の他の部分で発生した腫瘍(がん)が脳に転移したもので、多発性(多く発生すること)となることも少なくありません。原因となる腫瘍として最も多いのは「肺がん」です。転移性脳腫瘍の場合、治療の目的は完治することではなく、そのコントロールにあるといえます。

転移性脳腫瘍が大きくなると、腫瘍そのものが脳の組織を圧迫するだけでなく、周囲の脳組織が広範囲にむくんでさまざまな症状を引き起こします。たとえば肺がんなど、脳に転移する元となったがん自体は治療・コントロールができていても、脳の各部位が担っている重要な機能が損なわれると、生命の維持そのものができなくなってしまいます。そのことによって患者さんが亡くなってしまうのを回避するのがひとつの目標となります。

脳腫瘍が引き起こす神経症状によって患者さんのQOL(quality of life=生活の質)は著しく低下してしまいます。腫瘍の増大を抑え、コントロールすることで症状の改善をはかり、新たな症状があらわれるのを未然に防ぐことも治療の重要な目的です。

聴神経腫瘍聴神経鞘腫とも呼ばれる良性の脳腫瘍です。神経を包んでいる膜や鞘(さや)の細胞から発生します。主な自覚症状は聴力の低下やめまいです。この段階でMRI検査を受ければ、腫瘍が比較的小さな状態で治療することができますが、放っておくと周囲の神経や組織を圧迫してさまざまな症状を引き起こします。腫瘍の大きさが2.5cm以下で脳の圧迫症状がない場合には、ガンマナイフ治療が適応となります。
ガンマナイフ治療を行うと腫瘍が大きくならないようコントロールするか、むしろやや小さくすることができます。治療時の聴力がおおむね正常の場合,聴力は60〜70%程度の確率で治療後も温存できますが、ガンマナイフ治療前にすでにかなり聴力が落ちている場合にはより難しくなります。

髄膜腫は、脳を包んでいる硬膜の細胞から発生する腫瘍です。大きくなると脳を圧迫し、脳神経や血管などを巻き込んで神経症状を引き起こします。良性の腫瘍ですので急激に増大することはなく、ガンマナイフ治療を適切に行えば高い確率で腫瘍をコントロールすることができます。

下垂体腺腫に対する治療目的は大きく2つに分けられます。ひとつは腫瘍の増大をコントロールすることです。こちらの場合、ある程度放射線量を低くおさえても治療が可能です。もうひとつはホルモンの過剰分泌をおさえることですが、これには高い線量が必要になります。
下垂体腺腫のそばにある視神経は放射線感受性が高く、放射線治療による損傷を受けやすいといえます。したがって、視神経から近い、もしくは視神経を押し上げるほど大きな腺腫の場合は放射線量を低くしたり,手術による摘出を考える必要があります。多くの場合、低い線量でも腫瘍の増大を抑えることが可能ですが、ホルモンの過剰分泌を抑えることはできません。このような場合はガンマナイフよりも外科手術が適しているということになります。

脳動静脈奇形は先天的に異常血管が集まった疾患で、主に血管奇形部からの出血により発症、また痙攣発作で見つかる場合もあります。血管奇形の大きさが3cm以下または体積にして10cc以下のものがガンマナイフ適応とされます。最終的な治療の目標は「ナイダス」と呼ばれる血管奇形部本体の完全閉塞です。
治療後の経過は2〜3年のあいだに完全閉塞するのが約70%、部分閉塞は20〜25%です。3〜4年か、それ以上経過してから閉塞する場合もあります。完全閉塞せず残っているナイダスは出血の危険性があるため、治療から3〜4年経過しても完全閉塞していない場合にはガンマナイフによる再治療も考慮します。
自覚症状がなく、たまたま検査をして発見されたような脳動静脈奇形の場合でも、出血を予防する意味でガンマナイフ治療の適応になると考えてよいでしょう。

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