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インタビュー

肺がんの治療――​​ステージごとの治療法

肺がんの治療――​​ステージごとの治療法
小中 千守 先生

(公財)化学療法研究所附属病院 副院長/呼吸器外科部長、国際医療福祉大学 教授

小中 千守 先生

この記事の最終更新は2015年08月30日です。

肺がんはもっともよく知られるがんのひとつです。日本ではがんの種類別にみた死因の1位が肺がんで、特に男性に多いことが明らかになっています。
これまで2,000例以上の肺がん手術を執刀され、抗がん剤治療にも積極的に取り組んでおられる化学療法研究所附属病院副院長の小中千守先生にお話をうかがいました。

がんが進行している度合いによって、その段階を1期から4期に分類します。これをステージ(病期)といい、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳとローマ数字で表記されることもあります。また、この4段階以前のものを0期と呼ぶこともあります。

ステージI(1期)がんの大きさが5cm以内で肺の中にあり、リンパ節への転移がない。

ステージII(2期)がんの大きさは5cm以上だが、リンパ節への転移がない。
浸潤(周囲への広がり)が強いが、リンパ節への転移がない。
がんの大きさは5cm以上7cm以下で、肺内リンパ節または肺門リンパ節に転移がある。

ステージIII(3期)2期よりも進行しているが、4期よりは早期の段階にある。
•3A期:軽度の進行
•3B期:重度の進行

ステージIV(4期)肺から離れた別の臓器に転移(遠隔転移)がある。
最初にがんができた肺の反対側にも転移がある。
胸水(胸腔内にたまった多量の液体)にもがんがある。

肺がんの各ステージにおける治療の選択肢は?

  • ステージI・II:手術が治療の中心
  • ステージIII:抗がん剤による化学療法・放射線治療・外科手術を組み合わせて治療
  • ステージIV:抗がん剤による化学療法が中心

肺がんは大きくふたつの種類に分けられます。ひとつは小細胞がん、もうひとつは非小細胞がんです。

小細胞がんは肺がん全体の15〜20%と発生する頻度は高くありません。進行が早く遠隔転移しやすい悪性のがんですが、抗がん剤による化学療法や放射線療法が効きやすいがんでもあります。

肺がん全体の80%と、大半を占めるのが非小細胞がんです。非小細胞がんはその中でさらに腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんなどに分類されます。

  • 腺がん:気管支上皮細胞または肺胞上皮細胞から発生し、もっとも頻度が高い
  • 扁平上皮がん:気管支上皮細胞か気管支異型扁平上皮細胞から発生する。2番目に頻度が高い
  • 大細胞がん:頻度は低い。顕微鏡で見たときにがんの細胞が大きく見える

前項で述べた肺がんのステージ分類は、主にこの非小細胞がんの進行度合いをあらわすものです。

肺がんのステージ(病期)は以下の3つの要因によって決定されます。

  1. 原発腫瘍(元になるがん)の大きさ・状態
  2. 周辺のリンパ節への転移
  3. 遠隔転移(離れた臓器への転移)の有無

3つの要因を示す用語の頭文字からとってTNM分類といいます。

  • T:原発腫瘍(primary Tumor)
  • N:所属リンパ節(regional lymph Nodes)
  • M:遠隔転移(distant Metastasis)

T因子はがん細胞の大きさと浸潤の度合いによりT1〜T4の4段階に分類されます。N因子はリンパ節転移の有無ですので、転移なしはN0、転移ありの場合はN1〜N3の3段階に分類されます。M因子は遠隔転移の有無ですので、転移なしがM0、転移ありがM1と分類されます。

肺がんが進行して別の臓器への転移がある場合は、全身に作用する薬剤による化学療法が選択肢に上ってきます。治療に使われる薬剤には次のような種類があります。

従来から化学療法の中心になっていた薬剤で、がん細胞の増殖を阻害し、がん細胞そのものを殺す作用を持っています。現在肺がんに用いる抗がん剤はシスプラチンに代表されるプラチナ製剤と第三世代抗がん剤の組み合わせが主流ですが、これらはがん細胞を殺すだけでなく、正常な細胞にもダメージを与えるという副作用があります。腎臓や骨髄の機能低下、下痢・吐き気など症状や程度はさまざまですが、ほとんどの抗がん剤で副作用は避けられません。
ただし、近年新しい制吐剤や白血球増多剤が開発され、化学療法は外来治療としても安全に行えるようになりました。

がん細胞の増殖や転移に関わる分子に結びついて、その働きを阻害する薬剤です。がん細胞は正常な細胞とは異なり、染色体や遺伝子に特徴的な変異があります。がん細胞の変異のタイプを調べることによって、ある種のがんに特異的に作用する薬剤を使うことができます。

よく知られるところではEGFR遺伝子に変異が起きているタイプのがんに高い効果のあるゲフィチニブやエルロチニブ塩酸塩などがあります。がん細胞特有の働きに対して効果的に作用するので、一般的な抗がん剤よりも副作用が少ないというメリットがありますが、有効ながんのタイプは限られます。

私たちのからだの中で異物を取り除くために働いている免疫細胞の仕組みを利用して、がん細胞を攻撃するのが、免疫治療薬です。免疫機能を全体的に高める免疫賦活剤(めんえきふかつざい)に始まり、がん細胞の特徴を免疫細胞に覚えさせてより効率的に作用させる特異的免疫療法も開発されてきました。

免疫治療薬の領域で現在もっとも注目されているのはニボルマブです。免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれるもので、広い意味では分子標的治療薬のひとつともいえます。がん細胞は免疫T細胞の活動を抑制して不活性化させる仕組みをもっていますが、これを阻害することによって免疫T細胞が再活性化し、がん細胞を攻撃します。

治療が困難なメラノーマ悪性黒色腫)に高い効果があることが示されているほか、これまで治療の決め手がなかった切除不能な非小細胞肺がんや、進行期の肺扁平上皮がんに対する効果も期待されています。

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    小中 千守 先生

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