インタビュー

緑内障とは―日本で最も多い失明の原因

緑内障とは―日本で最も多い失明の原因
相原 一 先生

東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学 教授

相原 一 先生

この記事の最終更新は2015年09月05日です。

緑内障」という病気の名前は、近年よく知られるようになってきました。しかし、これが実際にどのような病気なのかということは十分には知られていません。

実は、緑内障は日本では最も多く失明の原因となっている病気です。しかし、早期発見と的確な治療を行えば多くの方にとってコントロールをしていくことが可能な病気なのです。緑内障の診療・研究ともに日本の第一人者である東京大学眼科学教授の相原一先生に、緑内障とはどのような病気なのかについてお話をお聞きしました。

緑内障とは、眼圧が上昇することにより視神経に異常が起こり、視力や視野の障害を引き起こす病気です。現在、日本では失明の原因として第1位になっています。世界的に見ても失明の原因として非常に重要です。失明に結びついてしまう理由としては、緑内障は末期になるまで自覚症状が出にくく、患者さんが受診に至らないためであると考えられています。

緑内障にかかると、最初に視野狭窄(視野が狭まること)が出ます。しかし、視野狭窄に気が付くことは難しいことです。特に鼻の側から視野が欠けてくる場合、左右の目がお互いの視野を補い合うためです。耳の側から欠けてくる場合は比較的気づきやすいといわれていますが、それでも視野障害はゆっくり進行するので、気が付きにくいのが現実です。そのため、日常生活にもさほどの不便が起こらず、気付く頃には症状がかなり進行してしまっているということもあるのです。

このように、多くの緑内障は「慢性進行性の視神経症」(ゆっくりと進みながら視神経を障害していくこと)です。現代の医療では視神経の再生はできません。そこで、進行を抑制していくことが治療の基本方針になります。

40歳以上では5%程度の割合(20人に1人)で緑内障の患者さんがいます。また、60歳以上では10%程度の割合(10人に1人)で患者さんがいるという調査結果が報告されています(岐阜県多治見市で実施された疫学の研究より)。つまり、日本全体でおおよそ400万人くらいの患者さんが潜在的にいるのではないかと考えられています。

しかし、先述したように症状が出にくいため、実際には緑内障の患者さんのうち1割程度しか病院に通っていない、すなわち残りの9割の方は未受診の状態であるとされています。眼科医のところにたどりついているのは、全国的にみてもごく一部の人だけなのです。

また、最初に「眼圧が上昇する」とお話ししましたが、最近では眼圧が正常値の範囲内におさまるものの視神経に異常が出る「正常眼圧緑内障」という病気も指摘されています。これは日本の全緑内障のうち、実に72%にものぼります。また外国においても、韓国で多いことが知られています。

しかし、そもそも眼圧の「正常値:10-20」という値はあくまで統計学的に定められた正常値です。20より高くても正常な人も沢山いますし、逆に正常値でもその人にとって健常かどうかは個人差があると考えられます。

たとえば、同じく「眼圧=18」という状態であっても、元々10であった人が18になった場合と、ずっと18の人がそのまま18である場合では話が違うのです。前者は大きな変化が起きており異常が疑われますが、後者には何の変化もなく、特に異常の疑いはありません。また、ずっと同じ眼圧でも年齢と共に圧力の障害を受けやすい人とそうでない人がいる可能性もあります。眼圧の数字だけでは一概に確定的な診断をできないという点が、緑内障の診断を難しくさせるひとつの原因でもあります。

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