肝臓はアルコールをはじめ、様々な毒素を解毒する機能を持っています。「沈黙の臓器」と言われるほど丈夫でなかなか自覚症状を現さない臓器ですが、過剰なアルコールの摂取によってその機能が壊れてしまうことがあります。これをアルコール性肝障害と呼びます。アルコール性肝障害とはいったいどのような病気なのでしょうか? 山王メディカルセンター内科部長の堀江義則先生にお話をお聞きしました。
アルコール性肝障害はアルコールが原因で引き起こされる様々な肝臓の病気の総称です。脂肪肝・アルコール性肝炎・アルコール性肝線維症・アルコール性肝硬変・アルコール性肝がんなどが代表的な病気とされています。
アルコールは、その大部分が肝臓で処理されます。飲酒などでアルコールが体内に入ってくると、肝臓はアルコールの代謝を始め、完全に分解されるまで働き続けます。つまり、毎日大量のアルコールを飲めば飲むほど肝臓は働き続けなければなりません。
ヒトは毎日大量にアルコールを摂取し続けると、アルコールを分解する酵素(MEOS:ミクロゾーム・エタノール酸化系)が活発に働くよう体が変化します。また、アルコールに対して脳神経が「慣れ」を生じます。その結果、たくさんアルコールを摂取できることが可能となります。しかし、そのように多量のアルコールを摂取し続けると、やがて肝細胞が変性・壊死(細胞が壊れ、働かなくなってしまうこと)し、ついには細胞間質の線維化が起こり、どんどん肝臓の働きが衰えてきてしまいす。これがアルコール性肝障害です。
このように、アルコール性肝障害はアルコールの大量摂取が原因となって発症します。つまり、アルコール性肝障害の原因は過剰な飲酒です。大量にお酒を飲む人ほど、また長期に渡って飲酒を続けている人ほど、アルコール性肝障害を発症するリスクが高いと言えるでしょう。
アルコールを分解する能力は個人の体質によって異なります。具体的には、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)というエタノールの代謝物であるアセトアルデヒドを分解する酵素がどのような遺伝子型を持っているかにより、お酒の強さが決まります。たとえば日本人において、お酒に強い人の割合は60%、弱い人は35%、極めて弱い人は5%とされています。ですから「何合以上飲むとアルコール性肝障害になる」と一概に言うことはできません。しかし、飲酒がアルコール性肝障害の要因となることは確かです。また、男性よりも女性の方が少ないアルコール摂取量でアルコール性肝障害を発症します。
患者さんはアルコール性肝障害の第一歩として最初にアルコール性脂肪肝を発症します。この時点ではまだ症状がありません。しかし、だからと言って放っておいていいというわけでもありません。そこからアルコール性肝炎やアルコール性肝線維症、アルコール性肝硬変へ病気が進行すると、より重篤になってきます。
独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センターによると、アルコール依存症の方々は約80%の割合で肝障害を起こしています。肝障害を起こさないためにも、自分自身がどれくらい日常的に飲酒をしているのか知っておくことが大切です。
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