インタビュー

尋常性天疱瘡の症状と経過。治療をしなければ生存率は低い

尋常性天疱瘡の症状と経過。治療をしなければ生存率は低い
天谷 雅行 先生

慶應義塾大学大学院医学研究科 皮膚科学 教授

天谷 雅行 先生

この記事の最終更新は2015年10月23日です。

尋常性天疱瘡は自己免疫水疱症と呼ばれる自己免疫疾患の一種で、デスモグレインというたんぱく質が関与していることが分かっています。はたして尋常性天疱瘡を発症すると、どのような症状が現れるのでしょうか? また、どのような経過をたどるのでしょうか? 自己免疫疾患研究のトップランナーであり慶應義塾大学医学部皮膚科教授の天谷雅行先生にお話をお聞きしました。

尋常性天疱瘡は粘膜皮膚型と粘膜優位型に分けられます。

粘膜皮膚型では全身あらゆる粘膜・皮膚に水疱とびらん(表皮細胞がはがれてただれ、内側が見えてしまう状態)ができます。具体的には口唇や咽頭、食道、眼瞼結膜などの粘膜部分や、鼠蹊(そけい)部、腋窩(えきか)部など、皮膚と皮膚に摩擦が生じやすいところに多発する傾向があるようです。具体的には表皮の発赤や水疱の出現がみられます。しばしばびらんを生じるため、重症のやけどを負ったように見えることもあります。適切な治療を施行しないと、皮膚表面から大量の水分が抜けて脱水状態となる可能性があるため注意が必要です。またステロイド内服や免疫抑制剤の使用で免疫力が低下し、副作用として感染症を起こすことが希にあります。

一方粘膜優位型では口腔粘膜を主体として症状が現れ、皮膚には限局した症状が生じます。つまり、粘膜皮膚型と粘膜優位型の違いは、症状が皮膚に広範囲にあらわれるか否かです。

天疱瘡のなかでも、尋常性天疱瘡は粘膜皮膚型と粘膜優位型ともに口腔粘膜の症状が激しいとされます。粘膜優位型の尋常性天疱瘡は口腔内に主に症状が多発します。

尋常性天疱瘡は発症初期から口腔内症状が目立ちます。水疱ができては破れることを繰り返し、口内炎が多発してしばしば痛みを伴うため、食べたり飲んだりが困難になることも珍しくありません。水疱は非常に破れやすく(弛緩性水疱)、すぐにびらん状態になってしまいます。粘膜のみに症状があらわれる人は、天疱瘡と診断されるまでに時間がかかってしまうことが多いです。

尋常性天疱瘡は放っておくと命に係わる重篤な疾患であり、できるだけ早期に皮膚科専門医に正しく診断されることが重要です。未治療のまま放置しておくと、それだけ自己免疫反応も進み、より重症になる傾向があります。早期に適切な治療を受けることで寛解(完治してはいないものの症状が治まり、生活に支障が出なくなった状態)率はぐっと高まります。ステロイドと免疫抑制剤の登場によって尋常性天疱瘡の治療後の経過は圧倒的に向上しました。ただし、ステロイドの副作用には注意が必要で、医師の管理のもとで慎重に治療を継続する必要があります。

何はともあれまずは皮膚科専門医のもとで早期に疾患を発見し、適切な治療を受けることが大切です。

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