インタビュー

病理医とはどのような存在か―「縁の下の力持ち」から臨床医へ

病理医とはどのような存在か―「縁の下の力持ち」から臨床医へ
長村 義之 先生

日本鋼管病院 鋼管クリニック 病理診断科部長、国際医療福祉大学大学院 特任教授

長村 義之 先生

この記事の最終更新は2015年10月23日です。

長い間、病理医はいわば「医療における縁の下の力持ち」として患者の目の届かぬところで活躍してきました。

たとえばがんなどの手術を受ける場合、実際に手術にあたる外科医以外に、病理医が正確な病気の原因を特定します。しかし患者さんが病理医と直接会話する機会はほぼなく、病理医は患者さんと直接接する医師をサポートする医師として認識されてきました。しかし近年、科学技術の発展とともに病理医の役割も大きくなってきました。

ここでは、国際医療福祉大学病理診断センター・センター長の長村義之先生に、病理医について説明していただきます。

長い間病理医は臨床医のお目付け役という意味合いで“Doctor’s Doctor”と呼ばれ、他の臨床医とは少し離れた存在でした。結果的に、一般市民からは、「病理医という医師がいるんだ」「病理医に対するイメージがない」「患者さんと直接触れることなく、医師をサポートしている医師」というようなイメージであったと思われます。

2007年まで、日本では病理は診療科として認められていませんでした。つまり、病理医は医師であるにもかかわらず、患者に直接対応することができなかったということです。

しかし、2008年に医療法の改正により『病理診療科』が標榜科目として認められ、2010年からは保険点数も認められるようになったことで、病院において他の医師と同じように臨床医として患者さんに直接接することができるようになりました。この出来事や科学技術の発展により、従来の役割に加えて病理医の携わる範囲が増大してきました。

患者さんが医師の治療を受ける場合、医師は治療に先立って患者さんがどのような病気に罹患しているかを正確に診断する必要があります。医師の肉眼による観察や聴診、問診といった診察は非常に重要です。また医療技術の進歩により、血液検査やレントゲンなどの画像診断といった様々な検査方法が医療の現場に取り入れられています。

しかしながら、それでも病気の原因が特定できないことは珍しくありません。病理医は、細胞レベルから病気の原因を調べ正確な診断を下すための専門医であり、正確な治療を行うための重要なカギを担っています。また、亡くなられた患者さんがどのような病気に罹患していたか、また生前の治療や診断が適確であったかを診断する役割も重要です。

病理医の必要性を理解していただけるもっとも身近な例として、がんの診断があげられるでしょう。多くのがんは、医師であっても肉眼で良性か悪性かを判断することが難しいことも稀ではありません。

この場合、外科医が患者さんの組織片を採取し、病理医が顕微鏡で観察した上で診断を下します。がんであることが判明して手術を行う場合も、病理医の存在は欠かせません。がんが疑われる病変を起こした組織が悪性なのか良性なのかを、病理医が判断します。

加えてがんの外科手術の場合、手術で切除された組織からがん細胞の取り残しがないかを診断する重要な役割も担っています。この場合、実際に体にメスをいれた状態の患者さんが待つ中で、迅速な診断を行わなければなりません。

医療技術の進歩により、レントゲンやCT、MRIといった画像診断、血液検査などによって、様々な病気が診断できるようになっています。しかし、一般的によくみられる症状であっても原因がひとつとは限らず、診断が難しいケースは少なくありません。そこで病理医は、全身の臓器に共通した病気の変化の概念を理解しています。これにより、実際に患者さんの治療にあたる専門医とは違った角度から病気の原因を追及でき、専門医との連携によってより的確な診断が可能になります。このように、病理医の存在は必要不可欠なのです。

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  • 日本鋼管病院 鋼管クリニック 病理診断科部長、国際医療福祉大学大学院 特任教授

    長村 義之 先生

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