インタビュー

認知症に対する医療のこれから

認知症に対する医療のこれから
内門 大丈 先生

医療法人社団彰耀会 メモリーケアクリニック湘南 理事長・院長、横浜市立大学医学部 臨床教授

内門 大丈 先生

この記事の最終更新は2015年09月27日です。

認知症医療はまだ発展途上であり、これから様々な診療科と連携して、様々な診療体制を整えていくことで、これから急増が予測される認知症患者さんをサポートしていくことができます。認知症の医療の将来について、湘南いなほクリニック院長・横浜市立大学医学部臨床准教授の内門大丈先生にお話頂きました。

認知症などによって、自力での生活や、家族による介護が難しくなった場合、介護施設を利用することになります。
がんの患者さんが終末期に自宅に戻って、自宅で最期を迎えるということは少なくありません。しかし、これは短い期間だから可能なことです。認知症の場合、経過がゆっくりで、数年スパンの介護になります。複数の世代で暮らしていたり、経済的に非常に裕福だとすれば、自宅での介護は可能かもしれません。しかし、核家族化が進行する現在の日本で、長い期間の介護を自分たちだけで行うのは、なかなか難しくなってきています。

介護施設には、さまざまな種類があり、料金などもさまざまです。要介護度や、認知症の有無、予算などによって選ぶことができますが、最近では、「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」などが多く設置されています。

  主な運営団体 認知症 医療依存度 要介護度 料金 メリット デメリット
介護付き有料老人ホーム 民間企業が多い 自立~重度 中~高 介護認定が不要、終の棲家になる 料金が高い
住宅型有料老人ホーム 民間企業が多い 自立~中度 中~高 介護が必要になってもサービスを受けられる 料金が高い、認知症の受け入れがない施設も
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 民間企業が多い 自立~中度 低~中 高齢者が借りやすい 重度の要介護者は受け入れられないこともある
グループホーム 社会福祉法人、民間企業など 要介護度2以上 中~高 認知症に強い 共同生活がストレスになることも
ケアハウス 社会福祉法人、地方自治体、民間企業など 自立~重度 低~中 料金が安い 認知症を受け入れてない施設も
特別養護老人ホーム 地方公共団体や社会福祉法人など 要介護度3以上 料金が安い 入所するための待機時間が長い
介護老人保健施設 医療法人が多い 要介護度1以上 低~中 医師が常勤している 長期入所はできない
介護療養型医療施設 医療法人が多い 要介護度1以上 低~中 医療スタッフが充実 今後廃止になる方向
養護老人ホーム 地方自治体、社会福祉法人 × 自立~中度 低~中 料金が安い 医療依存度が低い

病院に通って医療を受けることを「外来医療」、入院して医療を受けることを「入院医療」、そして、居宅や施設で医療を受けることを「訪問医療(在宅医療)」といいます。訪問医療(在宅医療)では、医師が施設や居宅に出向いて診療をおこないます。そのため、外出が困難な人でも安心して医療を受けることが可能です。

訪問医療(在宅医療)とは、24時間365日の体制をベースとして、定期的に計画を立てて患者さんの診療をおこなうことを指します。緊急の治療が必要で施設や居宅に伺うことは「往診」といって、別のものになります。医療行為が必要ではなかった人が、急に体調を崩し、最初は「往診」という形で医療を受け、往診の回数が増えてきたところで、定期的に訪問して医療行為をほどこす「訪問診療」に移行していくというケースが多いです。

このように、段階的に医療の受け方をシフトしていくことはとてもシステマティックに感じるかもしれませんが、実はかつての医療はもともとこのようなシステムだったように思います。

繰り返しになりますが、認知症は経過の長い病気です。患者さんたちの「病気」という一点だけではなく、「暮らし」まるごとを総合的にサポートしていく必要があります。

現在は「地域包括ケアシステム」というものが進められています。医療機関だけではなく、地域全体で認知症の患者さんがたをサポートしていこうというものです。また、進行した認知症だけでなく、軽度の認知症や、認知症予備群の方たちの予防を含めて、地域全体が動いていく必要があります。

認知症の患者さんをサポートするための学会どうしの連携も必要になってきます。日本プライマリ・ケア連合学会や日本在宅医学会では、認知症の終末期の緩和ケアや看取りなどに関して、どのように取り組めばよいかという議論がよくある一方で、日本認知症学会や日本老年精神医学会では、どちらかといえば、認知症の基礎研究、診断、治療などに重きを置いている印象です。互いの学問領域があまり連続的にならずに分断されてしまっているような感覚を持っています。

しかし、認知症全体の緩和ケアや看取りを考えたときには、早期診断から最期にいたるまで、全体を俯瞰してサポートをしていくことこそが、理想の「緩和ケア」であり「看取り」なのではないでしょうか。

地域の中で、一つの医療機関が継続して関わることができれば理想なのかもしれませんが、実際はその経過の長さから難しいことが多く、診診連携、病診連携、多職種連携を含めたサポート環境を構築していくことが必要だと考えます。
認知症に関わる学会もまた、このような視点(早期診断から看取りまで)から相互に学び、連携していくことで、「暮らし」のサポートを後方支援していけるのではないかと思います。

私が院長をつとめる「湘南いなほクリニック」は、「もの忘れ外来」と「訪問診療」の2本の柱をもつ医療機関です。
湘南いなほクリニックは、日本認知症学会、日本老年精神医学会の教育認定施設になっており、近隣の総合病院や大学病院と連携することによって、「もの忘れ外来」の質を担保し、早期診断・早期治療に努めています。また、地域で、認知症に関して勉強する場を提供するための研究会を定期的に開催しております。

*詳細は『認知症を包括的に診療するための取り組み』

訪問診療では、精神科医を中心に内科・外科・泌尿器科・麻酔科などの医師とタッグを組み、様々な診療科の視点から、患者さんを診療していくという形態をとっています。すべての精神科医は、日本プライマリ・ケア連合学会の認定医・指導医を取得しており、認知症を精神的・身体的両面から包括的に診ていくことを目標に掲げています。もちろん、地域においても、総合病院や他の診療所と連携をとりながら、患者さんを総合的にサポートするような医療を目指しています。

 

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    日本精神神経学会 精神科専門医・精神科指導医

    内門 大丈 先生

    1996年横浜市立大学医学部卒業。2004年横浜市立大学大学院博士課程(精神医学専攻)修了。大学院在学中に東京都精神医学総合研究所(現東京都医学総合研究所)で神経病理学の研究を行い、2004年より2年間、米国ジャクソンビルのメイヨークリニックに研究留学。2006年医療法人積愛会 横浜舞岡病院を経て、2008年横浜南共済病院神経科部長に就任。2011年湘南いなほクリニック院長を経て、2022年4月より現職。湘南いなほクリニック在籍中は認知症の人の在宅医療を推進。日本認知症予防学会 神奈川県支部支部長、湘南健康大学代表、N-Pネットワーク研究会代表世話人、SHIGETAハウスプロジェクト副代表、一般社団法人日本音楽医療福祉協会副理事長、レビー小体型認知症研究会事務局長などを通じて、認知症に関する啓発活動・地域コミュニティの活性化に取り組んでいる。

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