インタビュー

食道静脈瘤の治療

食道静脈瘤の治療
山本 博 先生

倉敷中央病院 顧問

山本 博 先生

この記事の最終更新は2015年10月29日です。

食道静脈瘤は、食道粘膜内にある静脈が太くなってこぶのようなかたまりを形成し、それが出血すると重篤な状態を引き起こす可能性のある病気です。出血しているか出血していないかによって治療法が異なり、適切な治療を施すことで早期回復が望めます。食道静脈瘤の治療について、倉敷中央病院副院長の山本博先生にお話し頂きました。

食道静脈瘤とは、食道粘膜の粘膜内ならびに粘膜下層にある静脈が太くなり、こぶのようになった状態を指します。これは、消化管から吸収した栄養分などを肝臓に送る輸送路である「門脈」にかかる圧(門脈圧)が上昇することで起こります。門脈圧が上がっている状態を「門脈圧亢進症」といい、食道静脈瘤はその症状のひとつです。

食道静脈瘤があるだけでは、自覚症状はありません。しかし、静脈瘤が進行すると、こぶが破裂して出血する危険性があります。突然の吐血(食道や胃の血を吐くこと)で気づくというケースも多いです。

門脈圧上昇の原因は、肝硬変や慢性肝炎で血液が通りにくくなったり、腫瘍、炎症により門脈自体が狭くなったり閉鎖したりすることにあります。

食道静脈瘤が破裂し出血した場合、まずは緊急上部内視鏡検査による診断を行い、すぐに治療を施します。出血をしているので、血を止めることが最優先です。

出血の部位が特定できない場合は、S-Bチューブという先端にバルーンがついたチューブを挿入し、内側から圧迫させて止血をします。

出血部位が確認できる場合は、多くは内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)という手法を用います。これは静脈瘤を小さな輪ゴムで止めて血流を遮断するというもので、緊急止血に用いられます。また、静脈瘤の血管内や周囲に硬化剤を注入して静脈瘤を固めてしまう、内視鏡的硬化療法(EIS)を適用することもあります。

緊急止血をしたあとは、患者さんの容態に応じて、再出血を防ぐためにバソプレシンという薬の点滴を投与します。また、緊急止血のあとは出来るだけ早い時期を選んで、永久止血を目指して静脈瘤根絶のための追加のEVL・EISを行います。

まだ破裂していない段階で静脈瘤を見つけたら、根治のための予防治療を行います。この際にも、先ほど紹介した内視鏡的硬化療法(EIS)または内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)が用いられます。

内視鏡的硬化療法(EIS)は静脈瘤を完全消失させるのに適しており、再発のリスクを低くすることができます。しかし、食道潰瘍・胸痛・発熱・腎機能障害・肝不全の増悪(症状が悪化すること)などの合併症が出る可能性があります。

これに対して内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)は合併症が少ないのですが、再発率が高いため、術後もきちんと経過を観察することが大切になります。

さらに、静脈瘤を取り除いた後の地固め療法として内視鏡的アルゴンプラズマ凝固というものも行います。これは、電気の伝導性が高い「アルゴンガス」を通して高周波電流(アルゴンプラズマ)を照射し、組織を凝固させる方法です。

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