インタビュー

HIVの感染

HIVの感染
谷口 俊文 先生

千葉大学医学部附属病院 感染制御部・感染症内科 准教授

谷口 俊文 先生

この記事の最終更新は2015年10月13日です。

前の記事ではHIVの治療や課題についてお話ししました。今回は、日本におけるHIVの感染者数やHIVの潜伏期間について、千葉大学医学部附属病院 感染症内科 助教の谷口俊文先生に引き続きご説明頂きました。

日本では1985年に初めてエイズ患者が確認されました。
厚生労働省エイズ動向委員会の報告によると、速報値である2014年の新規報告数は、HIV感染者が1,091件、エイズ患者455 件、合わせて1,546 件で、累計報告件数でみるとHIV感染者は16,903 件、エイズ患者は7,658 件となっています。

HIV感染後は、以下のような経過をたどります。

  • 感染初期(急性期): Tリンパ球(免疫のしくみの中心)に感染し、HIVは急激に増殖します。数週間の間に、急性HIV症候群(急性咽頭炎筋肉痛・関節痛・発熱などのインフルエンザ様症状)が現れる方もいますが、ピークを過ぎると症状が消失してしまいます。
  • 無症候期:数年〜10年以上など、感染者によりさまざまです。短期間でエイズを発症する方もいます。この間にもHIVは増殖を続け、免疫に重要なTリンパ球が減少していきます。
  • エイズ発症期:Tリンパ球が減少すると免疫不全状態となり、エイズを発症します。

クリニックや一般の診療所に来られる急性咽頭炎の患者さんの中に、HIVが原因となっている方がいる可能性があります。しかし急性咽頭炎の患者さんすべてにHIV検査を受けてもらうのは容易なことではありません。いずれにせよ、リスクが高そうな方には問診・検査を行うことが早期発見に繋がります。

アメリカでは、セクシャルパートナーや、何の仕事をされているかを聞くのは当たり前のことになっています。私自身も聞くようにしています。もちろん、答えたくない場合は答えなくても問題ありませんが、HIVの早期発見のためにはこのような問診や早めの検査が多くのクリニックや診療所で広まってほしいと考えています。

現在、世界的にはHIVの診断がなされればすぐに治療を行うようになっています。このような早期治療には、以下のような2つのメリットがあるためです。

  1. 合併症を防ぐことができ予後(身体の状態)が良い
  2. 体内のウイルス量が少ないため他人に移す可能性が低い

一方で日本では、基本的にCD4の値を治療開始の判断としている場合があります。

CD4とはTリンパ球のCD4 T細胞のことをいい、免疫の重要な役割を担っています。現在は、CD4値が500/mm3を下回ると治療が開始されます。以前までは薬の副作用が強く、服用させる時期をなるべく遅くしていたということや、医療費の問題で200/mm3や350/mm3が治療開始の値として定められていました。身体障害者手帳の申請の際にもこのCD4値は活用されており、エイズの症状が出ている場合は必ずしもこの限りではありませんが、500/mm3以下は3,4級、200/mm3以下は1,2級が目安になっています。

早期発見・早期治療が良いということは世界的に同意されていることですので、先ほども述べたように積極的に検査を受けてください。

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