インタビュー

慢性心不全の症状―急な症状の悪化に注意

慢性心不全の症状―急な症状の悪化に注意
山本 一博 先生

鳥取大学 医学部病態情報内科 教授、鳥取大学医学部附属病院 第一内科診療科群(循環器内科、内...

山本 一博 先生

この記事の最終更新は2015年11月02日です。

慢性心不全の症状にはどんなものがあるのでしょうか。また、急に症状が悪くなったときには、どんな変化に気をつければよいのでしょうか。鳥取大学医学部附属病院第一内科診療科群の主任診療科長である山本一博教授にお話をうかがいました。

心不全になると、健康な人なら何でもない平地での歩行など、ちょっとした動作でも疲れやすくなり、動悸や息切れを起こすようになります。そのほか、せきやたんが続き、むくみが出ます。

心臓の筋肉が弱って血液を送り出すポンプ機能が低下すると、1回の拍動で送り出せる血液の量が少なくなります。このため拍動の回数を多くして速いペースで血液を送り出し、循環する血液の量を補おうとします。その結果脈が早くなり、ドキドキという動悸を覚えます。

また、血液がうまく循環しなくなると肺に水がたまり、酸欠状態に陥ります。それをカバーするために呼吸の回数が増えるため、息切れがします。

全身に水がたまり、特に足の甲や足首、すねにむくみ出てきます。心不全の悪化にともない、末端から身体の中心に近い方へむくみがひろがってきます。また、水がたまることで体重が急に増えることがあります。

水がたまるのは足のむくみだけではありません。肺に水がたまると、せきやたんが続くことがあります。風邪の症状と勘違いしやすいため、長引くせき・たんには注意が必要です。

息切れの症状が急に悪くなったかどうかというのは、普段あまり動いていないとなかなか気づきにくいものです。日々の生活の中で分かりやすい変化は急激な体重の増加です。食事量があまり変わっていないのに1日で2kg以上体重が増えたという場合には心不全が悪化している可能性があります。これは前項で述べた「むくみ」のために水がたまるからです。

日頃から毎日体重を計っていないと、こうした体重の変化に気づくことができません。心不全になって治療をしている方は、体調管理のためにも日々の記録をつけておくことをおすすめします。

もし体重の増減がはっきり分からないときには、靴下を脱いだときにゴムの痕がついているかどうか注意してみるとよいでしょう。今までよりくっきり残ってなかなかとれないといったことがあれば、むくみが悪化していると考えられます。

日頃から血圧や脈拍を計っている方は、脈拍がいつもより早くなっているかどうかにも注意していただくとよいでしょう。脈拍数の正常範囲は人それぞれですので、絶対値よりもむしろ、いつもと明らかに違うというときに気をつけてください。不整脈が起こった時も要注意です。

次の外来の予約日に病院へ行ったら相談してみよう、と思われるかもしれませんが、急性増悪の場合の対応は先手必勝です。症状が軽いうちであれば比較的簡単な処置でリセットが可能ですが、先延ばしにするとその分症状が悪くなり治療にも手間がかかってしまいます。

慢性心不全の症状がどれくらい悪くなっているのかを判断する指標として、NYHA(NYHA(New York Heart Association)分類というものがあります。自覚症状に基づいて問診によって判定するため、簡便に短時間で患者さんの状態を知ることができますが、定量的・客観的な判定が難しい面があります。下記の通り、症状の有無やその程度によってI〜IVまでの4段階に分類します。

I度(無症候性)

  • 心疾患はあるが身体活動に制限はない
  • 日常的な身体活動では著しい疲労・動悸・呼吸困難あるいは狭心痛は起きない

II度(軽症)

  • 軽度の身体活動の制限がある
  • 安静時には症状がない
  • 日常的な身体活動で疲労・動悸・呼吸困難あるいは狭心痛が起こる

III度(中等症〜重症)

  • 高度な身体活動の制限がある
  • 安静時には症状がない
  • 日常的な身体活動より軽い動作や作業であっても、疲労・動悸・呼吸困難あるいは狭心痛が起こる

IV度(難治性)

  • 心疾患のためにいかなる身体活動も制限される。
  • 安静時にも心不全症状や狭心痛がある
  • わずかな動作や作業でも上記の症状が悪くなる

ただし、このような重症度分類は、あくまでも心不全であることの診断が確定した後に指標として用いるものです。主観的な自覚症状だけで心不全を自己判断することのないようにしてください。

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  • 鳥取大学 医学部病態情報内科 教授、鳥取大学医学部附属病院 第一内科診療科群(循環器内科、内分泌・代謝内科) 主任診療科長

    山本 一博 先生

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