インタビュー

貧血とは異なる立ちくらみやめまい「起立性低血圧」とは

貧血とは異なる立ちくらみやめまい「起立性低血圧」とは
佐藤 敦久 先生

国際医療福祉大学塩谷病院 病院長

佐藤 敦久 先生

この記事の最終更新は2015年11月21日です。

急に立ち上がったときの立ちくらみやめまいは、寝不足や疲れ、貧血などによっても起こる症状なので、経験のある方は意外に多いのではないでしょうか。その症状は、もしかしたら起立性低血圧なのかもしれません。起立性低血圧とはどのようにして起こるのでしょうか。国際医療福祉大学三田病院 内科部長・副院長の佐藤敦久先生にお話をうかがいました。

急に立ち上がったときや長時間立ち続けていると、立ちくらみ・めまいなどを起こすのが起立性低血圧です。起立性低血圧は大きく2種類に分かれます。ひとつは原因の明らかな症候性起立性低血圧、もうひとつは原因不明の特発性起立性低血です。

私たちが立っているとき、身体の中では血液が重力の影響で上半身から下半身に移行する傾向があります。健康な人の場合、自律神経の作用で下半身の血管を収縮させて血液量の配分を調節していますが、血液の循環を調節するしくみに障害が生じると、瞬時の血圧調整ができなくなるために一時的に血圧が低くなります。

受診される患者さんの中には、立ちくらみやめまいなどの症状を「貧血」と言ってこられる方も少なくありませんが、鉄欠乏性貧血とはまったく別の病態ですので、この点は区別する必要があります。診断の基準としては、立ち上がって3分以内に収縮期血圧(最高血圧)が20mmHg以上、拡張期血圧(最低血圧)が10mmHg以上低下した場合を起立性低血圧としています。

原因のはっきりしない起立性低血圧を特発性起立性低血圧といいます。患者さんは高齢の方が圧倒的に多く、高齢化が進んでいる現在、病院を訪れる患者さんの数が増えています。

このような高齢の患者さんでまず注意しなければならないのは、ふらついた時の転倒です。骨粗しょう症などで骨が弱くなっている方は骨折しやすいので要注意です。もうひとつは血圧の薬の使い方です。高齢の方は血圧を下げる薬を使っている方が少なくありませんが、あまり厳格な血圧治療を行なうと、起立性低血圧が悪化することがあるため、極端に血圧を下げるものは使わないようにします。

また、ひとつ前の記事で述べた本態性低血圧、いわゆる一般的な低血圧と同じように若い女性で起立性低血圧を訴える方も比較的多いといえます。

症状を予防するためには、あわてずゆっくりと動作に移るようにします。人混みや暑さで症状が出やすい人も、その状態をできるだけ避けるようにします。また運動で筋肉を鍛えたり、弾性ストッキング・弾性腹帯などの弾性着衣を着用することも症状の改善に役立ちます。

起立性低血圧の原因と考えられる疾患にはさまざまなものがありますが、もっとも多いのは糖尿病です。糖尿病性神経症のため自律神経の働きが悪くなり、立ち上がった直後の瞬間的な血圧維持ができなくなることが、起立性低血圧の原因です。

このほか、パーキンソン病や後述するシャイ・ドレーガー症候群も自律神経障害による起立性低血圧の代表的なものです。糖尿病にせよパーキンソン病にせよ、それぞれの疾患に対して治療を行なうことが必要です。

シャイ・ドレーガー症候群は特発性起立性低血圧のひとつで、40~60代の中高年男性に多く発症します。初期症状として起立性低血圧の症状がみられますが、進行すると自律神経症状だけでなく、小脳など広範囲にわたって運動神経が障害されてさまざまな症状を引き起こします。

失神やけいれん発作、食後低血圧、排尿障害や失禁、発汗異常、眼球運動異常、さらには筋肉の萎縮などの症状が現れます。現在のところ根本的な治療法はなく、対症療法によって症状を軽減することになります。
 

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