インタビュー

副咽頭間隙腫瘍とは-頭の中心にあたる顔の奥の重要な部位にできる腫瘍

副咽頭間隙腫瘍とは-頭の中心にあたる顔の奥の重要な部位にできる腫瘍
三浦 弘規 先生

国際医療福祉大学 教授

三浦 弘規 先生

この記事の最終更新は2015年12月12日です。

副咽頭間隙腫瘍(ふくいんとうかんげきしゅよう)とは、人間の身体をコントロールしている重要な神経や血管が走っている副咽頭間隙とよばれる場所に発生する腫瘍です。頭頸部領域に発生する腫瘍のうち、この場所に発生する腫瘍は0.5%といわれる比較的まれな疾患で、自覚症状があらわれないケースが多いという特徴があります。本記事では、副咽頭間隙腫瘍とはなにかについて、またその検査と診断について、国際福祉医療大学三田病院頭頸部腫瘍センター長の三浦弘規(みうら こうき)先生にお話をうかがいました。

副咽頭間隙とは顔面・頸部の深いところに位置する、解剖学的に非常に複雑な構造をした場所です。脳の直下であり人間の身体をコントロールしている重要な神経や血管が走っています。(以下の画像、赤色の領域)

茎状突起(けいじょうとっき)とそれに付着する筋肉(茎突咽頭筋、茎突舌筋、茎突舌骨筋)によって前後に前区(ぜんく)と後区(こうく)に分けられます。

副咽頭間隙腫瘍はこの副咽頭間隙に発生した腫瘍の総称です。頭頸部領域に発生する腫瘍のうちこの場所に発生する腫瘍は0.5%といわれ、比較的まれな疾患です。腫瘍が4-5㎝の大きさになるまでは症状があらわれない場合が多く脳外科領域で行われたCT/MRI検査で偶然発見されて紹介されることも多いようです。腫瘍がある程度の大きさになると、飲み込みに違和感を覚えたり、後述する通り神経の麻痺などが出てくる場合があります。

副咽頭間隙腫瘍は主に耳下腺をはじめとした唾液腺・神経・血管などから発生し、その約90%は良性腫瘍であり、悪性腫瘍は約10%程度といわれています。
副咽頭間隙腫瘍の種類と発生頻度は次のとおりです。

  • 唾液腺腫瘍耳下腺腫瘍ふくむ) 約50%
  • 神経そのものから発生する腫瘍(=神経鞘腫) 約30%
  • リンパ腫 約10%
  • その他(肉腫・筋肉や脂肪、血管の腫瘍など) 約10%

唾液腺は大唾液腺と小唾液腺に分類され、大唾液腺には耳下腺・顎下腺・舌下腺があります。最大の唾液腺は耳下腺であり、左右の耳の前方に位置します。前項でも述べたように、唾液腺腫瘍副咽頭間隙腫瘍の約50%を占め、そのうち約80%は良性とされています。

副咽頭間隙腫瘍は約90%が良性腫瘍で、主に多形腺腫(=唾液腺腫瘍)・神経鞘腫・頚動脈小体腫瘍などからなります。良性腫瘍のうち、多形腺腫は茎状突起前区に多く発生し、神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)は茎状突起後区に発生する傾向があるといわれています。これは茎状突起後区に迷走神経・交感神経・舌下神経など多くの神経が通っているためです。そのため腫瘍の発生部位が前区にあるのか後区にあるのか、また血流が豊富であるかどうかを根拠に画像診断のみで診断がつくケースが近年増えてきています。ただし悪性の可能性は完全には否定できないため、可能であれば口のなかから穿刺吸引細胞診で採った細胞を検査して診断の精度を高める必要があります。

  • 国際医療福祉大学 教授

    日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門医日本がん治療認定医機構 がん治療認定医日本頭頸部外科学会 頭頸部がん専門医

    三浦 弘規 先生

    臨床を中心に基礎研究も含めた頭頸部がん全般に携わる。院内各科は言うに及ばず、診療所あるいは病院間の縦割りの垣根を取り払い、広く横の連携を密としたチーム医療に取り組むことで、多岐にわたる治療法の選択肢を最大限に提示・実践を目指している。臨床試験も積極的に取り入れながら患者さんやご家族に納得いただける治療の提案をモットーとしている。また学会・論文等で情報発信することで頭頸部領域に貢献している。

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