インタビュー

大動脈瘤とはどのような病気か

大動脈瘤とはどのような病気か
内田 孝之 先生

飯塚病院 循環器病センター長兼心臓血管外科 部長

内田 孝之 先生

この記事の最終更新は2016年01月06日です。

大動脈瘤と診断されて「手術が必要です」と突然いわれたら、誰しもすぐには受け入れられず不安になることでしょう。自覚症状がない大動脈瘤は、治療の必要性を十分に理解することが大切とされています。高齢の患者さんの多い筑豊地区で大動脈瘤の治療を担ってきた、飯塚病院心臓血管外科部長の内田孝之先生にお話を伺いました。

大動脈瘤は患者さんがもっとも手術を受け入れられない病気のひとつといわれます。というのも、患者さんの約9割以上が自覚症状を感じないからです。当科を受診される動脈瘤の患者さんでも、たまたま受けた腹部超音波検査で見つかった方や、定期健康診断のレントゲンで指摘された方、他科のCT検査で偶然見つかった方がほとんどです。

紹介元の科も様々です。ごくまれですが、声がかれたので耳鼻科を受診すると反回神経麻痺と診断され、その原因が動脈瘤だったということなどもあります。

このように、ほとんどの患者さんがその前日までまったく意識もせずに普通の生活をしていたわけです。しかも症状などないため、そこで突然「手術が必要です」といわれても、患者さんとしては青天の霹靂といった受け止め方しかできません。

他の病気で病院を受診したり、健診を受けたりして偶然大動脈瘤がみつかって当科に来られる方が多いので、まずは大動脈瘤とはどんな病気なのか十分に理解してもらうことが必要になります。そこで、患者さんに正確な知識を持ってもらうため、飯塚病院では最初の外来で30分~1時間ほどの時間をかけて説明を行っています。

大動脈瘤とは、その名のとおり大動脈が瘤のように腫れあがり、ときには破裂してしまう病気のことです。

大動脈は直径が2~3センチほどある、身体の中でいちばん大きな血管です。

血管は大きく動脈と静脈の2つに分けられます。動脈とは、心臓から肺や肝臓などの各臓器に向かう血液が流れる血管で、静脈は各臓器から心臓へと戻る血液が流れる血管です。動脈のうち、心臓から出て下腹部あたりで両方の足に向かい、2方向に分岐するまでの部分を大動脈といいます。身体中の血管はすべて大動脈から分岐しており、横隔膜より上を胸部大動脈、下を腹部大動脈と呼びます。この部分のどこかがこぶ(瘤・りゅう)のようにふくれるのが大動脈瘤です。

大動脈瘤の患者さんのほとんどは自覚症状がなく、大動脈がどこにあるのか知らない患者さんも少なくありません。当科では、「大動脈とは?」についても説明から行うようにしています。

大動脈瘤の形は、全体がほぼ均一に膨らんだ紡錘状(ぽうすいじょう)のものや、一部分がいびつに膨らんだもの(嚢状)などさまざまです。大動脈瘤は大動脈のどこにでもできますが、 横隔膜より上にできると「胸部大動脈瘤」、下にできると「腹部大動脈瘤」と呼びます。

こぶは大動脈のどこにでもできますので、まずは腹部にできたものなのか胸部にできたものなのか、こぶができた場所を診断します。胸にできたこぶについては自覚症状がなく、声がかれたりしない限り症状がありません。おなかにできた場合は自分で触ることができるので、患者さんご本人に触ってもらいます。すると、患者さんによっては「これは病気だったのですね。このこぶは以前からありました」という方もおられます。

動脈瘤の原因については今のところはっきりと特定はされていませんが、動脈硬化で血管が脆くなると瘤が膨らむことがわかっています。血圧が高かったり、たばこを吸っていたりすると瘤が大きくなりやすいため、これらに当てはまる場合は注意しなければなりません。

ただし最近は、二親等以内の親族に動脈瘤の方がいると、いない場合と比べて10倍以上発症しやすいという疫学的なデータが報告されています。それを裏付ける遺伝子上の解析はまだありませんが、将来的には遺伝的な要因の関与も示されるかもしれません。現時点でも一部では遺伝子異常を伴う組織の異常から動脈瘤になりやすい疾患も見つかっており、若年症例ではこういった疾患の有無の判断も重要となります。

繰り返しになりますが、大動脈がみつかって重要となるのが、治療(手術)をするべきかどうか? の判断です。このためには、その動脈瘤が破裂しやすいものかどうかを見分けることが必要になります。

大動脈瘤の特徴は、ほとんど症状がないことです。そのため、いつ破裂するかわからないのがこの病気の怖いところでもあります。動脈瘤の破裂のリスクは、 こぶが全体的にふくらんだものであれば、大きさである程度の予測をすることができます。一方、形がいびつなものについては形状で判断します。こぶの形は破裂のリスクを予測する上でとても重要になります。

 

《破裂直前の徴候》

こんな時にはただちに専門医の診察を

胸部大動脈瘤

胸や背中の痛み

喀血(かっけつ)

腹部大動脈瘤

腹痛、腰痛や腹部膨満感(おなかがいっぱいになった感じ)

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