インタビュー

先天性心疾患患者の社会的な自立のために

先天性心疾患患者の社会的な自立のために
丹羽 公一郎 先生

千葉市立海浜病院 循環器内科

丹羽 公一郎 先生

この記事の最終更新は2016年01月01日です。

小児期医療の発展により、先天性心疾患患者の長期生存が可能になりました。先天性心疾患患者が直面する問題は年齢によりさまざまで、主に教育・結婚・就業・社会保障などが挙げられます。先天性心疾患患者も自立して生活することが必要となってきていますが、具体的にどのような問題が出てくるのか、聖路加国際病院 心血管センター 特別顧問の丹羽公一郎先生にお話しいただきました。

先天性心疾患の患者さんの高校卒業率は一般の方とほとんど変わりません。心疾患を抱えている場合でも、入学が問題となることはほとんどなく、階段の昇降が大変な状態などの場合によっては教室の場所を3階から1階に変更するなどの対応をしてくれる学校もあります。心疾患を抱えていることは必ず学校に知らせ、「学校生活管理指導表」を用いて、どの程度の運動が可能かということも報告します。

ただし、ここで問題となるのが、同級生などの生徒に心疾患を知ってもらえているかということです。先天性心疾患で手術を受けた場合、胸に手術痕が残ります。小学高学年や中学生になると、児童生徒は、手術痕の意味を理解して、配慮することができるようになってきますが、小学低学年では、手術痕について無邪気に指摘してしまうこともあります。心疾患を抱えるこどもにとっては何気ない一言がストレスになりますし、いじめのきっかけとなる可能性もあります。そこで、教師から生徒たちに「この手術跡は頑張った証拠である」、「心臓の病気を抱えている」というような正しい指導があると、心疾患患者の精神的な負担が少しは改善されるのではないでしょうか。また、心理や精神科の医師のサポートなどを受けながら、学校に通うこともできます。

男性患者の場合は、家族を養うという責任感があるため、心疾患が重篤であればあるほど経済的なバックグラウンドの弱さが結婚を含む社会的自立に障害となる場合があります。既婚率は男性の場合、一般に比べ低く、女性は既婚率が高い傾向にあります。多くの先天性心疾患患者は、性生活や結婚生活が可能です。ただし、妊娠は前述したとおり、避けることが望ましい場合もありますので、その場合は避妊に対しての正しい知識が必要となります。

先天性心疾患患者ではデスクワークが多い傾向にありますが、就業率は一般の方とほぼ同程度です。また、重症患者においても身体障害者手帳を申請することで、身体障害者での雇用が受けられます。平成25年4月1日から、障害者雇用促進法が改定され、障害者や心疾患患者の雇用の機会が拡大されました。企業への障害者雇用の義務付けが進むことにより、今後も心疾患患者の就業は可能となるのではないでしょうか。その場合、コンピューターが操作できることや資格などを取得するとさらに雇用の幅が広がりますので、就業訓練などを受けることも勧めています。

ただし注意が必要なのは、心疾患が内的障害であるということです。周囲に心疾患を抱えていることを知ってもらえていない場合、周りからは健康であると思われてしまいます。それにより、早く帰ることに対しての非難や、体力以上の仕事を任されてしまうということも少なくありません。医師の診断書により改善されることがありますが、内的障害をもっている患者さんに対しての職場の対応などは今後も改善が必要な部分です。

先天性心疾患の患者さんは多くの場合、生命保険に入ることが困難です。この原因は、先天性心疾患患の患者さんが何歳まで生きることができるのかというデータがないためです。先天性心疾患の手術が行われるようになったのが50年ほど前ですので、今後、先天性心疾患患者の長期的な予後の研究が行われることで、改善されていくことではないかと考えています。

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