インタビュー

疥癬の予防

疥癬の予防
尾上 泰彦 先生

プライベートケアクリニック東京 院長

尾上 泰彦 先生

この記事の最終更新は2016年01月01日です。

疥癬の予防には一般的な感染症に行う対策だけでなく、ヒゼンダニの生態を理解した上での対応が必要です。疥癬の病態、診断、治療などについて医療従事者だけでなく施設の方、患者さんやその家族などにも十分に理解していただくことが予防対策につながります。今回は疥癬の予防・対策について尾上泰彦先生に教えていただきました。

疥癬の予防においては、疥癬患者さんを見落とすことなく早期診断・治療を行うことが重要です。従って、医療施設、高齢者施設などの集団生活の場で疥癬の患者さんが確認された場合は、まず他に感染者がいないかどうかを確認し、治療を開始します。通常の疥癬では濃厚な接触がなければ感染のリスクは低いといわれています。そのため、集団内で数ヶ月の間に2人以上の疥癬患者さんが認められた場合は、角化型疥癬による集団感染を疑い、発生源である角化型疥癬の患者さんの発見に努めることが重要視されています。

集団発生の原因はさまざまで、感染のリスクはケースによって異なると考えられています。そしてそのリスクを軽減するために負担できる費用と労力の度合いによって、必要な対策は変わってきます。集団発生時の対応に一定の基準はないので、各施設の実情と以下の4点を考慮した上で検討する必要があります。

1)疥癬の感染性は患者さんに寄生しているビゼンダニの虫体数によって異なります。そのため、臨床所見で感染リスクをグレード分けする試みもあります。被接触者側の免疫機能が低下していると感染しやすくなるので特に注意が必要です。

2)初感染者の発症から集団発生が認められ対策を開始するまでの期間が長いほど、集団発生の規模が大きくなります。また、濃厚接触がおこる程度がどの程度かなども、集団発生の規模に関わってきます。

3)集団発生においては感染予防策を指揮するリーダーが必要になります。リーダーは関係者を指揮し、調査を行わねばなりません。また、感染予防策への費用と労力をどのくらい負担するかについても、リーダーが決定する必要があります。

4)角化型疥癬は感染力が強いので、角化型疥癬患者さんは個室で隔離をしないといけない場合もあります。隔離はインフォームドコンセントを得て、期間は最小限に抑えるべきです。

疥癬の予防治療は、保険の適用ではありません。そのため、予防治療を行う際には、予防のメリットおよびデメリットについてインフォームドコンセントを取得して行う必要があります。

予防治療の対象となる方は、主に角化型疥癬患者さんと濃厚接触した方です。予防治療を行うと、たとえ感染していたとしても、潜伏期間中に発症しないまま治癒することが期待できます。

集団内での疥癬の発症率が高く、集団全員に感染している可能性がある場合には、全員に予防治療を行うことがあります。実際に予防治療をおこない集団発生を短期間で抑えた報告もある一方で、イベルメクチンの一斉投与を受けた方が後日疥癬を発症したという報告もあります。予防治療を行う際は、その効果の限界を理解しておく必要があります。

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