インタビュー

心房細動の治療の進歩

心房細動の治療の進歩
熊谷 浩一郎 先生

福岡山王病院 ハートリズムセンター センター長、国際医療福祉大学 大学院 教授

熊谷 浩一郎 先生

この記事の最終更新は2016年02月08日です。

不整脈の中でもっとも多い心房細動に対するカテーテルアブレーションが日本で導入されたのは1998年のことでした。心房細動の発生起源が特定され、アブレーションによって治療成績も向上しました。日本初となる心房細動へのカテーテルアブレーションを導入した福岡山王病院ハートリズムセンター長の熊谷浩一郎先生に、治療の進歩についてお話を伺いました。

不整脈には脈が異常に速くなる頻脈、反対に遅くなる徐脈、そして脈が飛んだり抜けたりする期外収縮の3つのタイプがあります。不整脈の中で一番多くみられるものが心房細動というタイプのもので、これは頻脈性に分類されます。

これまで不整脈は、ペースメーカーや薬などによる治療を中心に行われてきました。しかし、不整脈に対する薬物治療はあくまでも対症療法にすぎず、薬を服用している間は不整脈を抑えることができるものの、止めるとまた出てきます。また、薬を使用することで予後(病気や治療の見通し)が悪くなるということも報告されるようになり、薬以外の方法で心臓のリズムを正常に治せないかと取り組まれてきました。

心房細動は、不整脈の発生起源がわからなかったため、焼灼する部位の特定ができませんでした。そんな時、フランス人医師のHaissaguerre先生が、心房細動が左心房の中にある肺静脈という血管から起こっていることをつきとめたのです。肺静脈をアブレーションして心房細動が治ったという論文報告が発表されたのは17年前の1998年のことでした。それで私も早速、臨床で心房細動に対するアブレーション治療を導入したのです。これは日本で最初となる心房細動に対するカテーテルアブレーション治療となりました。

心房細動へのアブレーション治療は、最初は順調だったのですが、再発するケースが出てくるようになりました。肺静脈は4本あるのですが、左右上下の肺静脈からも起こっていたのです。そのため、1本だけ焼いてもダメだということで考え出されたのが、肺静脈隔離術です。どの肺静脈から起こってもいいように、肺静脈の入り口となる開口部の周りをぐるりと4本とも囲むように焼灼する治療法です。これもHaissaguerre先生が考案したものです。

肺静脈隔離術は2000年に報告され、この治療法によってどこから起こっているのか探さなくても、また心房細動が起きていない時にも治療ができるようになりました。

ただ、この治療法も100%ではありません。どんな病気もそうだと思いますが、心房細動においても治療は早く行うほど効果は良好です。心房細動の場合、偶然何かの検査でみつかったという方も決して少なくありません。症状があれば患者さん自ら病院を受診することもありますが、そうでなければ、病院に行くことはありません。そうなると、その間に症状が進行して病院を受診した時には手遅れということもあるのです。

いつから心房細動が起こっていたのかわからないようなケースの場合に、手遅れかどうかを判断する目安となるのが左心房の大きさです。通常、左心房の大きさは4センチ以下です。心房細動は時間の経過とともに発作性から持続性へと進行し、左心房の大きさもそれに伴って4.5センから5センチへ、さらには5.5センチといった感じで大きくなっていきます。

カテーテルアブレーションの成功率は、左心房の大きさと反比例しますので、左心房が大きい場合には、成功率が低下します。成功率が良好なのは左心房の大きさが4.5センチ以下で、5センチを超えると非常に悪くなります。5センチを超えるような場合は、ほぼ持続性になっていると考えてよいでしょう。

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