インタビュー

原発性胆汁性肝硬変の治療について——薬物治療

原発性胆汁性肝硬変の治療について——薬物治療
石橋 大海 先生

国際医療福祉大学 名誉教授、福岡山王病院 非常勤、柳川療育センター 施設長

石橋 大海 先生

この記事の最終更新は2016年01月12日です。

難病の一つである原発性胆汁性肝硬変は全国に約5~6万人の患者さんがいると推定されています。多くの場合、無症状のまま経過して天寿を全うされる方が多いといいます。英語表記である

Primary Biliary Cirrhosis の頭文字をとってPBCと呼ばれるこの病気の治療法について、福岡山王病院の石橋大海先生にお話を伺いました。

原発性胆汁性肝硬変PBC)は、発症や進行に自己免疫が大きく関わっている病気です。通常、免疫反応は自分のからだに対しては起こらないものですが、自分のからだの成分に対しても免疫反応が起こる免疫の異常が自己免疫疾患なのです。PBCもその自己免疫疾患の一つですが、その発生機序や原因といったことがまだはっきりとは分かっていないのが現状です。

発生機序や原因も分かっていないため、根治治療というのはありません。それぞれの患者さんの病態に応じた対策を行うことが必要となります。

治療の基本は、胆汁のうっ滞を改善し、肝硬変への進行を抑えるというPBCそのものへの治療と、PBCに伴って生じる症状および合併症に対しての治療に大別されます。

〈PBCの症候〉

  • 無症状(であることが多い。)
  • 身倦怠感(全身のからだのだるさ)
  • 胆汁うっ滞に基づく症状
  • 皮膚掻痒(引っ掻き傷)
  • 黄疸

④肝障害・肝硬変に基づく症状

  • 吐血・下血(食道静脈瘤破裂)
  • 腹部膨満(腹水)
  • 意識障害(肝性脳症
  • 免疫異常、合併した他の自己免疫疾患に基づく症状
  • 乾燥症候群(目、口腔内の乾燥症状)など

PBC治療の基本は、第一選択薬であるウルソデオキシコール酸(UDCA : ursodeoxycholic acid)の投与です。この薬は非常に効果を示し、PBCの多くの患者さんにこの薬物の有効性が期待されます。

UDCAは、昔からある薬で、からだの中にある成分でもあるため、比較的安全に使用できます。副作用も少なく、そして何より安価です。そのため、PBCと診断されたらほとんど全ての場合にUDCAが使用されます。

UDCAの投与量は欧米では1日に13~15mg/kg(体重1kgあたりに対して13〜15mg)とされていますが、日本では通常は600mg/日、100mg錠が使用されていますので、1日6錠の内服が基本になります。時に1日300mg(3錠)投与をされている例をみかけることがありますが、この量では不十分です。

UDCAはほぼ全てのPBCに有効で、半年ほど投与することでアルカリホスファターゼ(ALP)やγGTPといった胆道系酵素は顕著に低下します。しかし、6か月から1年投与してもALPやγGTPといった数値が正常化しない場合には、UDCAを900mgまで増量します。

最近は体重の重い患者さんが増えていますので、1日600mg投与では13~15mg/kg/日という投与量を確保できない可能性があるのです。

さらに、UDCA900mgへの増量でも反応がよくない患者さんに対しては、ベザフィブラートという薬が追加で投与されることがあります。この薬は通常は高脂血症に対して使われる薬剤ですが、PBCに対する効果が日本で見いだされました。1日400mg(200mg錠を1日2回)をUDCAに追加して投与することで、胆道系酵素の改善効果が確認されています。しかし、日本ではまだPBCに対する使用は保険適応にはなっていません。高脂血症を合併している場合保険で使用できますが、横紋筋融解症等の副作用に注意する必要があります。

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