インタビュー

超音波で関節を評価する。関節超音波検査でわかること

超音波で関節を評価する。関節超音波検査でわかること
白石 吉彦 先生

隠岐広域連合立 隠岐島前病院 院長

白石 吉彦 先生

この記事の最終更新は2015年12月29日です。

「整形内科」という言葉を聞いたことがありますか?整形外科は聞きなれた言葉ですが、「整形内科」は初めて聞いたという人も多いのではないでしょうか。骨や関節の病気であっても手術が要らない病気はたくさんあります。その「整形内科」で大切な検査は関節超音波検査です。これまでは関節に炎症を起こすような病気はMRIの検査で診断されることが多かったのですが、関節超音波検査が普及し始め、MRIの無い診療所であっても関節炎の診断や経過が見れるようになりました。ここでは関節超音波検査の有用性や診断できる疾患についてご説明します。

関節超音波検査は関節エコーとも表現されます。他の超音波検査と同様に、観察部位にゼリーを塗ってプローブと呼ばれる装置をあてて検査をします。検査は人体に害がなく、痛みや熱もありません。また動かしながら検査ができるため、関節を動かしながら痛みの原因をみることもできます。これまで炎症の評価に使用されていたのはMRI検査ですが、MRIができないとされる体に金属が入っている人や閉所恐怖症の人も問題なく検査できます。検査時間は観察する部位や個数によりますが5分~30分程度です。関節超音波検査の特徴はいつでも・どこでも・誰でも・簡単に・必要な部分をすべて・体に害がなく・安く検査できるという点です。

関節炎の代表疾患は関節リウマチです。現在、関節リウマチは色々な治療法が出てきており、超音波での関節の炎症の評価は治療方針を決めたり、治療が効いているかを評価するのに重要な役割を果たしています。超音波検査では関節リウマチで起きる滑膜の炎症を直接観察することができます。炎症を起こしている関節の滑膜は正常よりも厚みが増し、関節液が増加し、内部に異常な血流信号を認めます。関節リウマチではレントゲン検査もよく行われますが、レントゲンでは骨の評価が中心になります。

また、血液検査で炎症反応といわれるCRPや血沈、リウマチの活動性を見るためのリウマトイド因子や抗CCP抗体がありますが、これら血液検査は全身の炎症を反映しており、ぞれぞれの関節の程度は評価できません。実際、慢性リウマチの診療に関節超音波検査を導入している病院では関節リウマチかどうか診断するために検査が行われます。さらに治療を開始した後、関節の炎症が落ちついているか、治療効果を判断するためにも行われます。

肩関節周囲炎」は一般的に五十肩と呼ばれているものです。この疾患も超音波で診断することができます。その他に変形性肩関節症、石灰性腱炎、腱板炎、関節包炎、筋膜性症候群、痛風などの関節疾患も診療可能です。さらにエコーを使いながら狙った位置に注射器を使って薬を注入することもできます。