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粒子線治療のこれから
「粒子線治療とは」では粒子線治療と、代表的な粒子線治療である陽子線治療・重粒子線治療について説明しました。粒子線治療は放射線治療の1つであり、特に集中的にがんに対して放射線を当てることができるた...
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粒子線治療のこれから

公開日 2016 年 02 月 04 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

粒子線治療のこれから
不破 信和 先生

伊勢赤十字病院 放射線治療科 部長

不破 信和 先生

粒子線治療とは」では粒子線治療と、代表的な粒子線治療である陽子線治療・重粒子線治療について説明しました。粒子線治療は放射線治療の1つであり、特に集中的にがんに対して放射線を当てることができるため、後の発がんリスクが少ないなどのメリットがあります。しかし、粒子線治療を成立させるためにはさまざまな課題があります。世界で最初に作られた、陽子線治療と重粒子線治療を同時に行なえる施設である兵庫県立粒子線治療センターで、名誉院長を務められる不破信和先生にお話をお聞きしました。

機器の適正な配置について

粒子線治療の機材は非常に大きく(図)、設置するためには数十億円という莫大な費用がかかります。たとえ機器を作ったとしても、簡単に採算がとれるわけではありません。安価で気軽に買えて使いやすい医療機器ではないのです。数十億円単位で費用がかかる機材を購入することは、それを使いこなせるのかしっかり考えてから覚悟を決めて購入する必要があります。

先述したように、粒子線治療の中でも陽子線治療と重粒子線治療は、違う治療方法です。特に重粒子線治療においては本当に必要な疾患は限られており、さらに慎重になる必要があります。

医療機器を設置するのであれば、採算がとれるような治療を行わなければなりません。だからといってムダな治療がなされても決していいはずはありません。

民間病院で機器を作ったとしても、がんを全く治療していない施設で作ってもその病院や施設にとってメリットはあまりありません。粒子線治療装置が病院の広告塔になることはないと考えるべきと思います。

シンクロトロン
(図)シンクロトロン

患者さんを集約しながら医療機器を運用する

現在、日本では次々と粒子線治療の施設が計画されています。私はこれに粒子線治療の専門家としての見解を述べようと思います。

粒子線治療が必要な患者さんは、概ね悪性腫瘍を持つ方の1%、日本では年間9000人程度であるといわれています。つまりまずは需要を考えなくてはいけません。需要を考えずに、特に重粒子線治療は、良い治療だからとにかくたくさん作ってしまおうというわけにはいかないはずです。

つまり、どこの地域にどれくらいの需要があるのか、それを満たすためにはどの規模の施設が必要なのかを計算します。計画的に必要な施設を計算し、必要な施設作る。そして、作った施設に患者さんを集めます。

これは粒子線治療に限ったことではなく、諸外国では当たり前のように行われていることです。本来は患者さんをある程度までは一箇所に集める必要があるのです。それにより治療に対する医療従事者側の経験も増え、よりよい治療ができるのです。

よい治療ができると共に、ムダな施設を作らなくても済みます。限りある医療コストを有効に計画的に使わなくてはいけません。

メディカルツーリズムへ

現在、日本では粒子線治療の施設が次々と計画されていることをお話ししました。しかしおそらく国内だけで採算がとれるものではありません。それでは今後、粒子線治療の施設はどのように活用するべきなのでしょうか。

ひとつ考えられるのは、メディカルツーリズム(居住国でない国や地域で医療サービスを受けること)の一環です。これは国際親善にも繋がります。粒子線治療は大きな機材だけではなく、よく慣れた医師・放射線技師・放射線物理士が必要です。

日本で機材を設置するのであれば、よい人材を育ててよい治療を提供する環境作りを整備していくべきなのです。また採算がとれる仕組みを作ってこそ「継続的に」よい治療を提供することができるのではないでしょうか。

それには何より計画が必要です。国内の需要を満たすにはどうすればよいのか? また国外、例えば近隣のアジアの人たちにも貢献するためにはどうすればよいのか? ひとつひとつ考えながら実践することが大切です。

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愛知がんセンター副院長、南東北がん陽子線治療センター長、兵庫県立粒子線医療センター院長を経て、現在では伊勢赤十字病院放射線治療科で部長を務める。放射線治療、特に粒子線治療の本邦におけるトップランナーとして知られる。また、口腔がん領域における動注療法でも国内有数の名医として知られる。