インタビュー

プリオン病とは-心理社会的支援が非常に大切な病気

プリオン病とは-心理社会的支援が非常に大切な病気
山田 正仁 先生

国家公務員共済組合連合会 九段坂病院 院長

山田 正仁 先生

この記事の最終更新は2016年01月31日です。

プリオン病という病気をご存知でしょうか。プリオン病は感染因子「プリオン」による感染によって引き起こされる病気です。致死的な神経の変性が起こります。プリオン病は、ヒトからヒトだけではなく、動物からヒトにも感染する「人獣共通感染症」であり、一時期世間を騒がせた「狂牛病」もそのひとつです。本記事では、プリオン病とはなにか、その分類と患者数について述べます。

※本記事は、厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等克服研究事業(難治性疾患克服研究事業) プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班の研究代表者である、九段坂病院 院長 山田 正仁(やまだ まさひと)先生にご監修いただいております。

プリオン病は感染因子プリオンが原因で起こり、進行性に神経が変性していき、最後には死に至ってしまう病気です。プリオン病はヒトにも動物にも感染する「人獣共通感染症」です。動物のプリオン病では、牛の牛海綿状脳症(BSE・“狂牛病”)や、羊や山羊のスクレイピーという病気が有名です。日本では2003年から五類感染症に分類されており、医師は診断後7日以内に保健所へ報告することが義務づけられています。

プリオン病の原因は、健康なヒトの体内にも存在する「正常プリオン蛋白(cellular prion protein:PrPc)」の構造が変化して生じた「感染型のプリオン蛋白(scrapie prion protein:PrPsc)」です。プリオン病では、この感染型プリオン蛋白が脳に沈着し、脳神経細胞の機能が障害されて起こります。

ヒトのプリオン病は大きく分けて、孤発性・遺伝性(家族性)・獲得性の3つのタイプに分かれます。ヒトのプリオン病では、孤発性のクロイツフェルト・ヤコブ病CJD)、家族性のゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)、食人の風習のあったパプアニューギニアのある種族だけに起きる獲得性のクールー病や牛のBSEが伝播したとされる変異型CJDなどが知られています。

ヒトのプリオン病は人口100万人あたり年間約1人の確率で発症します。日本の調査では、毎年100人から200人の発病が報告されています。プリオン病の患者さんの内訳は、日本では76.7%が孤発性、19.4%が遺伝性、3.6%が獲得性といわれています。地域差や男女差はなく、世界各国に孤発的に発生しています。イギリスで発生した牛海綿状脳症(BSE・“狂牛病”)がヒトに感染したとされる「変異型CJD」が、2005年2月に日本でも1例確認されました。日本では屍体由来乾燥硬膜製品(確認されているものは全てLyodura*)の移植により感染した「医原性CJD」が他国に比較して多いのが特徴的で、硬膜移植後CJDについては全世界のおよそ2/3が日本の発症者です。

 * Lyodura(ライオデュラ)とは、死体から取り出した硬膜によって製造されたドイツの会社の乾燥硬膜製品のことです。

プリオン病はタイプによって少しずつ臨床症状が異なります。典型的なCJDのケースでは、認知症、ふらつき、不規則なふるえ、視覚の異常などの神経・精神症状が急速に進行し、3-4ヶ月以内に寝たきりになります。孤発性・遺伝性(家族性)・獲得性それぞれの臨床症状については、各タイプの記事で説明します。(参照:孤発性遺伝性(家族性)獲得性

診断の第一歩は、現在の病歴や診察所見からプリオン病の可能性を疑うことです。さらに、的確な病歴(家族歴・移植歴・渡航歴等)や、検査(脳波・MRI、脳脊髄マーカー・プリオン蛋白遺伝子等)所見により診断します。

プリオン病は特定疾患治療研究事業対象疾患に指定されており、医療費助成を受けることができます。難病情報センターのホームページには、医療費助成を含め、一般の方及び医療従事者向けの情報が掲載されています。ヤコブ病サポートネットワークのホームページには患者家族支援情報が掲載されています。

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