インタビュー

褥瘡の予防―さまざまな予防法について

褥瘡の予防―さまざまな予防法について
立花 隆夫 先生

星ヶ丘医療センター 皮膚科 部長

立花 隆夫 先生

この記事の最終更新は2016年01月31日です。

褥瘡はその発生原因から、体の一部分にかかってしまった圧を逃すことで発生を予防できることもわかっています。今回は実際どのようにして褥瘡を予防したらいいのか、その具体的な方法について、引き続き大阪赤十字病院皮膚科部長の立花隆夫先生にお話をお伺いしました。

褥瘡は自分では体位変換を行うことができないために生じています。そのためまずは定期的に体位変換をサポートすることがとても重要です。基本的には少なくとも2時間に1回は体位変換を行った方がいいでしょう。特定の部位に圧がかからないように、体圧分散マットレスを使用することもあります。この場合でも体位変換は4時間に1回は行うようにしましょう。在宅療養で同居者の介護が必要な場合、自動体位変換機能付エアマットレスを使えば家族の負担も減らすことができます。

具体的には、体位変換では寝た状態から約30度だけ横に傾けた状態にしたり、90度傾けた横向きの状態に変換するようにして、圧が逃げやすいポジションにします。重症集中ケアを必要とする患者さんにはローリング機能付き特殊ベッドによる体位変換を行うこともあります。ただ、ご自身で一度体験されると実感されるかと思いますが、地面に対して30度だけ傾いた状態や特殊ベッドの動きは、一般の人にとってはとても不快な感覚があります。定期的に動くベッドの上は、まるで船酔いの感覚すら覚えます。そのため、脳血管疾患などで患者さんの意識がない場合に使用することが多くなっています。

また、座った状態での褥瘡を予防するためには、体圧再分散クッションを使用することが勧められています。自分で姿勢を変えられる場合は15分ごとに変換を行いましょう。

栄養が不足すると褥瘡になりやすく、また褥瘡ができたときに治りにくくなります。そのため蛋白質やエネルギーが低栄養状態の患者さんに対しては、高エネルギー・高たんぱく質のサプリメントによる補給を行うことが推奨されています。また必要な栄養を口から摂取することができない場合は腸に直接栄養を補給する経腸栄養、またはそれも不可能な場合には点滴に静脈栄養を行います。

その他にも尿漏れ・便失禁などがある方は、前述の通り、肛門や陰部をきれいにした後に周囲の皮膚に保護のための保湿クリームを塗ることをおすすめしています。

また、褥瘡が出来やすい部位にポリウレタンフィルムやすべり機能つきドレッシング材と呼ばれる皮膚を保護するシートを貼ることが推奨されています。特に手術後で寝たきりの状態が続いている患者さんに対しては、仙骨部をポリウレタンフィルムで保護する場合があります。

そもそも褥瘡は病気になった人が寝たきりになってしまうためにできた「副産物」の状態です。病気を治すために病院に来ている人に対して、新しい病気をつくる訳にはいかない、という観点から、日本褥瘡学会は2005年に褥瘡の科学的根拠に基づく治療方針を発表しました。そして現在では褥瘡に対するガイドラインも第4版まで改訂されており、褥瘡はかなり早期の段階から対策がなされるようになりました。しかし、もともと医療における保険点数は、病気の治療に対してしかつかないという時代がずっと続いてきました。つまり、予防の対策をとっても、病院側には一切利益にならなかったということです。それが2002年以降に、褥瘡予防の対策をとることに対して、保険点数が加点されるようになりました。予防に対して加点がされるという意味で、これは医療界全体としても大きな変革でした。

また、今でこそ患者さんを中心とするチーム医療は当たり前の時代になりましたが、わずか15年前には、医者が他職種と連携するということはほとんどありませんでした。それが2002年、褥瘡対策のために、褥瘡専門医師と褥瘡の専従ナースが患者さんを中心としてチームをつくり、治療にあたるという形をはじめてとることになりました。さらに褥瘡対策チームによる褥瘡の予防・治療は、チーム医療の成功例となりました。こうして現在では緩和ケアチームや栄養サポートチーム(NST)など、様々な分野でチーム医療の活動が広がっています。

 

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