インタビュー

褐色細胞腫の症状と診断

褐色細胞腫の症状と診断

医仁会武田総合病院 内分泌センター長

成瀬 光栄 先生

この記事の最終更新は2016年06月25日です。

記事1『褐色細胞腫とは。副腎から発生する腫瘍』では褐色細胞腫の病態と原因についてお話ししました。続いては褐色細胞腫の具体的な症状とその診断方法について、引き続き京都医療センター 臨床研究センターの成瀬光栄先生にお話を伺いました。

褐色細胞腫の症状は、記事1『褐色細胞腫とは。副腎から発生する腫瘍』の最後でもお伝えしたように、主に高血圧や血圧の大きな変化となっており、患者さんの約45%に高血圧がみられます。しかし、高血圧患者全体のうち褐色細胞腫が原因である場合は約0.1%(およそ1000人に1人)であり、実際に高血圧の患者さんの検査をしていて褐色細胞腫が見つかることはめったにありません。 

一方、褐色細胞腫の患者さんが自覚される症状としては頭痛・動悸・吐き気・異常な発汗・不安感といった症状があります。そのほかにも脈が速くなる(頻脈)・脈が乱れる(不整脈)・立ち上がるときにめまいがする(起立性低血圧)・過呼吸になる・皮膚が冷たいのに湿っている・胸が苦しい・みぞおち付近が痛む・呼吸困難感・便秘といった多彩な症状が現れます。

長期的には心不全動脈硬化心筋梗塞脳血管障害といった重篤な疾患を合併する可能性も高くなっています。高齢の方の場合は、高血圧状態が長期にわたって続き、体重減少も伴っているというケースもみられます。代謝の亢進により、体重減少を伴うこともあります。

高血圧患者さんの多くが高血圧の原因は不明ですが、褐色細胞腫は診断されれば手術によって治療ができ、症状を改善することができます。このような症状が長期間にわたって続く場合は、病院で検査を受けることをお勧めします。

前項では主な症状について説明しましたが、実際に臨床現場においてこのような症状がある疾患は褐色細胞腫以外にも非常に多く、その症状から褐色細胞腫と診断される患者さんは多くありません。実は健診や他の病気の検査のために撮影したCTやMRIで、たまたま腫瘍が見つかるというケースも増加しています。

前述の通り、褐色細胞腫は副腎髄質のクロム親和性細胞が増殖し、カテコールアミンを過剰に産生している腫瘍です。そのため、血液検査または尿検査によって血液中または尿中にどれだけカテコールアミンが含まれているかを調べます。カテコールアミンが過剰に増加している場合、褐色細胞腫が疑われます。

このようなスクリーニング検査の結果で褐色細胞腫が疑われた場合、さらに腫瘍がどこにあるのかを特定するために、胸やお腹のCTまたはMRIを撮影します。

また、CTやMRIといった画像で診断するほかに、放射性医薬品を用いて褐色細胞腫の局在を明確にする方法も、ときに行います。この場合、MIBGと呼ばれる化合物を静脈に入れ、注射後一定期間後に身体のスキャン(撮影)を行います。

さらに、褐色細胞腫を合併しやすい疾患(例えば多発性内分泌腫瘍Ⅱ型など)が疑われる場合はその疾患の診断に必要な検査も追加されることになります。

褐色細胞腫の診断がついた後は良性か悪性かを調べる必要があります。通常は手術後に病理診断といって、腫瘍細胞の特徴を観察することにより、悪性かどうかを判断します。しかし褐色細胞腫は病理診断では良性・悪性の判断が難しいとされており、他の臓器への転移が出現して、初めて悪性であることが明らかになることもあります。

 

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