インタビュー

口唇裂・口蓋裂の後遺症について―後遺症のほとんどない治療をチーム医療で実現する

口唇裂・口蓋裂の後遺症について―後遺症のほとんどない治療をチーム医療で実現する
稲川 喜一 先生

川崎医科大学 医学部 臨床医学 元形成外科学教授

稲川 喜一 先生

この記事の最終更新は2016年02月05日です。

口唇裂・口蓋裂の治療について―時間はかかることもあるが、治る病気である」では口唇裂口蓋裂の治療においてチーム医療がいかに大切かということをお話ししました。川崎医科大学では確立した口唇裂・口蓋裂のチーム医療の結果、後遺症がほとんどない治療を実現することができるようになりました。では川崎医科大学ではどのようなチーム医療を行っているのでしょうか。川崎医科大学形成外科学教授稲川喜一先生にお話をお聞きしました。

口唇裂口蓋裂の治療にはさまざまな科が関わる必要があり、さらに治療が長期間に及ぶことについては「口唇裂・口蓋裂の治療について―時間はかかることもあるが、治る病気である」でお話ししました。川崎医科大学ではこれらのスタッフが基本的に全て病院内に揃っています。さらに患者さんが自ら動くのではなく、医師が集まるという仕組みをとっています。

普通の病院ですと、形成外科・リハビリ科・矯正歯科・耳鼻咽喉科など、複数の科を自らまわらなければなりません。しかし当院ではドクターが患者さんのもとに来ます。そうすることで専門家同士が意見を交換することが可能になり、さらには医師一人ひとりの技量も上がります。「患者さんが動くのではなく、医師が集まる」ことにより患者さんの負担を減らしながら診療の精度を高め、チームとしてもまとまりが良くなるのです。

このように、すべての科が連携してこそ良い治療ができるようになります。今ではほとんどの方のケースで、見た目としてもきれいに治るようになりましたし、発声における後遺症もほとんどなくなりました。そのため「口唇裂・口蓋裂があっても基本的には心配はいりません」と言えるようになったのです。

川崎医科大学で口唇裂・口蓋裂の患者さんに非常に良い治療をすることができるようになってきた結果、鳥取や島根などの山陰地方や四国からも紹介が来るようになりました。今や当院は中・四国地方の口唇裂・口蓋裂治療の中心的な施設になりつつあります。患者さんが集まれば集まるほど、システムや治療も洗練されます。これにより確立されたシステムの一つ一つの部分の精度を、さらに高めていきたいと考えています。

どのような場合に後遺症の心配があるのか、そしてどの程度の割合で後遺症の心配があるのかについてお話しします。

大きく分けると、1:口唇裂のみで、口蓋裂がない場合(口唇裂・口蓋裂全体の約30%)2:口蓋裂がある場合(口唇裂・口蓋裂全体の約70%)となります。

口蓋裂がない場合、ほとんど後遺症なく治療できると考えてよいです。手術方法の進歩により、口唇の手術瘢痕はほとんど分からないほどになっています。鼻や人中(唇にある二つの山)の形も手術で再現できます。

口蓋裂が存在する場合、ごくわずか(数%程度)に後遺症が残ることがあります。特に発声に必要な口蓋の筋肉の形成が生まれつきよくない場合です。しかし後遺症が残ったとしても「何を話しているのかわからない」という状況になることはまずありません。言語療法によるリハビリを積極的に行うので安心してください。今はリハビリも進歩しており「聞き返されることが若干多い」程度ですみます。最悪の場合でもその程度だと考えれば問題ありませんから、過度に心配することはありません。

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