インタビュー

口唇裂・口蓋裂のこどもの子育てにおける注意点―口唇裂・口蓋裂をもつこどものために(2)

口唇裂・口蓋裂のこどもの子育てにおける注意点―口唇裂・口蓋裂をもつこどものために(2)
稲川 喜一 先生

川崎医科大学 医学部 臨床医学 元形成外科学教授

稲川 喜一 先生

この記事の最終更新は2016年02月07日です。

現在は、口唇裂(こうしんれつ)・口蓋裂(こうがいれつ)の手術や治療法がかなり進歩しています。治療にともないご家族の協力も必要になりますが、専門の医療チームがその都度説明やサポートを行うので、お子さまの健やかな成長を見守りながら徐々に問題を解決していくことができます。しかしご家族は、授乳や離乳食など子育てに関することや、医療費などについて多くの不安をお持ちでしょう。

この記事では、川崎医科大学附属病院「口唇裂・口蓋裂ケアチーム」の資料をもとに、口唇裂・口蓋裂のお子さんの子育てにおける注意点について、川崎医科大学形成外科学教授稲川喜一先生にご説明いただきます。

口唇裂(こうしんれつ)」のみの場合は、お母さまの直接的な授乳が可能です。お子さまが乳頭に触れることでお乳の出が良くなり、子育てにおいて有効な母子のスキンシップもできます。

口蓋裂(こうがいれつ)」をともなう場合は、吸う力と飲み込む力が弱く、充分に母乳やミルクを飲むことができないので、専用の哺乳瓶(ピジョンP型哺食器)などの使用がお勧めです。哺乳の助けになるホッツ床を装着する場合は矯正歯科医や専門医に説明を受けましょう。なお、母乳は免疫力を上げる効果があるので、可能であれば搾乳(さくにゅう)したものを飲ませてあげてください。

離乳食は通常通り5~6ヵ月ごろに開始して大丈夫ですが、口唇裂口蓋裂のお子さまは離乳が遅れることがあります。無理に食べさせると嫌がるようになり、離乳がうまく進まなくなる可能性もあります。そんなときは、何よりもお母さんの根気が大事です。月齢にこだわらず、お子さまのスピードを大切にして、1回の量や回数の工夫をしながら、ゆったり進めていきましょう。

予防接種を受けることにより、予防接種の副反応(副作用と同じ意味)が起こる可能性があるため、予防接種を受けられない期間があります。生ワクチンについては手術前後1ヵ月、不活化ワクチンでは手術前後1週間は接種を控えて下さい。お子さまの予防接種の計画については、小児科主治医にご相談ください。

特に、口蓋裂があるお子さまの場合、自浄作用(唾液などによる自然殺菌洗浄)が落ちて虫歯ができやすくなります。虫歯は矯正治療に影響するので、以下のような予防を心がけましょう。

・食後(授乳後)は白湯や番茶を与えて、ミルクや食べカスが口の中に残らないようにする

・毎日ホッツ床を磨き、清潔を保つ

次のお子さんを妊娠する際、再発の確率を下げるために「葉酸」の摂取をお勧めします。内服に関しては産婦人科医へご相談ください。妊娠するとたくさんのビタミンが必要になりますが、なかでもビタミンB群の一種「葉酸」は非常に大切です。欠乏すると口唇裂口蓋裂などの先天異常を引き起こしやすくなります。

口唇裂口蓋裂の原因はまだはっきりしていません。しかし、ご家族に同患者の方がいる場合は、発現率がやや高いとの報告があるので、ご心配があれば小児科、遺伝外来でのご相談をお勧めします。

口唇裂口蓋裂のお子さまは、以下の公的な支援対象になります。

  1. 「乳幼児医療費」…乳幼児の医療費を各市町村が助成する制度です。地域によって対象年齢や所得制限などが大きく異なります。
  2. 「自立支援医療(育成医療)」…乳幼児医療費のあと、18歳未満までが対象となり実施されます。指定育成医療機関でのみ受け取ることができます。

 

※本記事は、川崎医科大学附属病院「口唇裂・口蓋裂ケアチーム」による『口唇裂・口蓋裂をもつお子さまの健やかな成長のために(リーフレット)』をもとにしています。

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