インタビュー

若年性特発性関節炎の治療

若年性特発性関節炎の治療
森 雅亮 先生

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座 教授

森 雅亮 先生

この記事の最終更新は2016年02月14日です。

若年性特発性関節炎はさまざまなタイプに分類されますが、初期診療の段階では正確な診断が難しい場合が少なくありません。全身型とそれ以外のタイプに分けてそれぞれの標準的な流れに沿った治療を行いつつ、同時進行で鑑別診断を進めていきます。小児膠原病のエキスパートであり、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座で教授を務める森雅亮先生に、若年性特発性関節炎の治療の流れについてお話をうかがいました。

若年性関節リウマチに対する治療法として、1990年代に葉酸代謝拮抗剤であるメトトレキサート(MTX)の少量間欠療法がさかんに行なわれてきました。しかし、若年性特発性関節炎の中でも関節型の約30%の患者さんには無効であり、吐き気や嘔吐のために治療を受けられない患者さんもいました。また全身型の患者さんでは、このMTXは炎症の抑制に効果がありませんでした。

その後、炎症システムの解明が進むと、生物学的製剤として欧米ではTNF-α阻害薬が開発され、日本でもIL-6阻害薬が開発されるようになりました。特にIL-6阻害薬は全身型若年性特発性関節炎(sJIA)の患者さんによく効くことがわかり、その後全身型以外の関節型についても使用が承認されています。

このほか、若年性特発性関節炎の薬物治療では炎症を鎮めるために以下の薬剤が使用されます。

  • 非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)
  • ステロイドホルモン:グルココルチコイド(GC)
  • ステロイド系抗炎症薬:プレドニゾロン(PSL)、メチルプレドニゾロン(mPSL)

グルココルチコイド(GC)の全身投与によって炎症を鎮めることが治療の中心です。関節痛に対しては非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)を使用します。病気の経過全般において、マクロファージ活性化症候群(MAS)への進展に注意を払い、MASが疑われた場合は早急に小児リウマチ専門施設に連絡をとり治療を開始します。炎症鎮静後にグルココルチコイド(GC)の使用量を減らす場合は治療アルゴリズムのフローに従って行います。

全身型の場合には、ステロイド系抗炎症薬でも関節炎が改善しない、あるいは薬を減らすことができず副作用で困っている患者さんが少なくありません。そのような場合には、次の記事でご紹介する生物学的製剤のトシリズマブが非常に有効で、約95%の方で症状が改善したというデータがあります。この治療によってステロイド治療をやめることができ、最終的にはトシリズマブ自体を使わなくて済むようになる症例も出てきています。

日本では若年性特発性関節炎に対して適応が認められている非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)はないため、関節痛および関節炎に対して適応があり、小児への使用が認められているイブプロフェンとナプロキセンを投与しつつ鑑別を進めます。診断がつき次第リスク判定を行い、ハイリスク群にはメトトレキサート(MTX)の経口投与を開始します。

治療開始後も画像検査により定期的に治療の効果を判定し、改善しない場合はリウマチ専門医(小児科)または日本小児リウマチ学会運営委員にコンタクトを取り、生物学的製剤による追加治療を行います。

  • 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座 教授

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    森 雅亮 先生

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