インタビュー

もやもや病の原因について

もやもや病の原因について
吉村 紳一 先生

兵庫医科大学 脳神経外科 主任教授/診療部長/脳卒中センター長

吉村 紳一 先生

この記事の最終更新は2016年02月21日です。

脳の血管が徐々につまり、脳梗塞脳出血を引き起こす可能性のあるもやもや病。その原因と発生のメカニズムについて兵庫医科大学脳神経外科主任教授の吉村紳一先生にお話を伺いました。

もやもや病についてのはっきりとした原因や発症のメカニズムは、現在ではまだ解明されていません。この病気が認知され始めた頃(1950年代)には先天性の血管奇形によるものではないかと考えられていました。その後、1980年代までは先行感染(風邪など何らかの病気に感染すること)によって引き起こされる後天性の疾患であるという説が有力になりました。しかし、もやもや病であると疑われる患者さんのうち10%の方で「親子や兄弟などの家族がもやもや病を発症したことがある」ということや、特にアジア人の方が発症すること多いということが分かったこともあり、遺伝性の疾患なのではないかと考えられるようになりました。

もやもや病の患者さんは欧米諸国やアフリカでは少なく、東アジアに特に多い疾患であるため、何らかの遺伝的要因があるのではないかと考えられるようになりました。そこで日本・中国・韓国・ドイツ・チェコの5カ国の病院や大学が協力する国際研究チームによって遺伝子要因の研究が行われました。

そして2011年、「RNF213」という遺伝子がもやもや病の感受性遺伝子(その病気になりやすい素質がある遺伝子)であるということが確認され、このRNF213遺伝子の働きが抑制されたときに脳内の動脈に異常が起こるという研究結果が報告されました。

これまでに日本人・中国人・韓国人・ドイツ人・チェコ人の患者さんを合わせ、300人分の遺伝子情報を調査したところ、RNF213遺伝子に何らかの変異があることがわかりました。日本人の患者さんの90%・韓国人の患者さんの79%・中国人の患者さんの23%にこの遺伝子の共通した変異が見つかっています。

ただしRNF213遺伝子の変異による疾患は実はもやもや病だけではなく、動脈硬化と共通した素因にもなるということもわかっています。

一方で、健康上特に問題のない方(国際研究チームが東アジア(日・中・韓)の患者・非患者を幅広く調査した内の非患者)の2~3%程度にもこの遺伝子の変異がみられたとも報告されており、RNF213遺伝子に変異があるからといって必ずしももやもや病を発症するとは限らないのです。

このため現状ではRNF213遺伝子の変異に何らかの環境的な要因が加わることで、発症するのではないかと考えられています。

現段階では、もやもや病の予防法はいまだ見つかっておらず、脳梗塞脳出血を発症すると後遺症を来たしたり命を失う可能性もある疾患です。遺伝的要因や環境要因など、発症のメカニズムをさらに解明することによって、有効な予防方法が発見されることが期待されています。

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