インタビュー

口唇口蓋裂の原因とは 先天的な疾患の一つ

口唇口蓋裂の原因とは 先天的な疾患の一つ
玉田 一敬 先生

東京都立小児総合医療センター 形成外科医長

玉田 一敬 先生

この記事の最終更新は2016年04月13日です。

口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)は先天的な疾患の一つであり、生まれつき唇や顎がきちんとくっついていない部分があることから摂食や構音(言葉を発するなど口から音をつくること)機能が障害される病気です。口唇裂、顎裂、口蓋裂など、どの部分がきちんとくっついていないかによって名称も変化します。口唇口蓋裂とはどのような病気で、何が原因となるのでしょうか。東京都立小児総合医療センター形成外科医長の玉田一敬先生にお話しいただきました。

口唇口蓋裂は先天異常のひとつです。通常、ヒトの顔は左右から伸びるいくつかの突起が癒合することによって作られますが、この癒合が不十分だと、唇や顎がうまくくっつきません。これらの癒合が完成しないまま生まれてきた状態を、口唇裂(こうしんれつ)や口蓋裂(こうがいれつ)などと呼びます。

このような状態は、一般的には「口唇口蓋裂」(こうしんこうがいれつ)とまとめて表現されていますが、唇だけが癒合不全(ゆごうふぜん:きちんとくっついていない状態)のもの、歯茎にも癒合不全があるもの、口蓋に癒合不全があるものと、癒合不全の起きている場所によって名称が異なります。

実際には、口唇口蓋裂は唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)と単独口蓋裂のふたつに大別してとらえられています。

左:左完全唇顎(口蓋)裂、中:唇顎口蓋裂に伴う口蓋裂の状態、右:単独口蓋裂

唇顎口蓋裂はさらに、裂が口唇のみにとどまるもの(口唇裂)、歯茎にまで及ぶもの(唇顎裂)、さらに口蓋部分にも裂が存在するもの(唇顎口蓋裂)に分けられます。単独口蓋裂の場合には、口唇や歯茎に裂は存在しません。

日本では500~600人に1人の割合で口唇口蓋裂の赤ちゃんが生まれてくると考えられています。口蓋裂のみの患者さんはもう少しまれで、およそ700~800人に1人です。

口唇裂とは赤ちゃんの体が形作られるとき、上口唇の癒合が不十分となり、不十分な癒合が裂(裂け目)として残ったまま生まれてきた状態のことです。裂が鼻まで達しているかどうかにより、完全裂(裂が鼻まで達している状態)と不完全裂(鼻まで到達していない状態)に分けられます。片側のみに発生することもあれば、両側に発生することもあります。

顎裂は歯茎に割れ目がある状態です。顎裂単独で発症することはなく、口唇裂と合併する形であらわれます。歯を支えるための骨(歯槽骨:しそうこつ)が欠損しているため、歯並びにも影響があります。そのような場合には将来的(主に小学校の時期)に、歯槽骨(しそうこつ)への骨移植が必要となってきます。

口蓋とは口の中の天井に当たる部分で、口唇と同様、胎児期に口腔内の組織のもとが癒合することによって形成されます。この部分の癒合が不十分な状態を口蓋裂と呼びます。

口蓋裂の場合は口の中の天井の部分に裂が存在するため、しばしば構音(言葉などの音をつくること)と嚥下(飲み込み)に影響を及ぼします。唇顎口蓋裂の一部として発症することもあれば、口蓋裂が単独で発症することもあります。

妊娠初期に顔をはじめとする様々な器官が形成されますが、この時期に口唇や口蓋の癒合がうまくいかなかったことが口唇口蓋裂の原因と考えられています。

口唇口蓋裂の発症に関係する可能性のある因子は、遺伝的要素・環境的要素を含めて多数挙げられています。しかしながらそれらの因子のうち、ある一つの因子だけがきっかけで発症するわけではなく、多数の因子が複雑に影響しあい、結果としてある一定の限界値(しきい値)を超えたときに口唇口蓋裂が発生すると考えられています(多因子しきい説)。基本的には偶然の要素が大きいものだと考えていただいて問題ありません。

しかし、なかには特定多数の症状を併せ持った状態(症候群)の一つとして起こる場合があり、そのような場合には合併異常の検査が必要になるため、診断には慎重さが求められます。

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