インタビュー

多発性筋炎・皮膚筋炎の検査・診断方法

多発性筋炎・皮膚筋炎の検査・診断方法
村田 顕也 先生

和歌山県立医科大学 教育研究開発センター 教授

村田 顕也 先生

この記事の最終更新は2016年03月22日です。

筋肉の炎症によって筋力が低下する多発性筋炎皮膚筋炎は、この病気に関わる抗体の新たな発見によって診断基準なども変わっています。その検査や診断方法について、和歌山県立医科大学神経内科学講座准教授の村田顕也先生にお話をうかがいました。

患者さんの詳しい状態を確定させるためにさまざまな診断を行います。これは回復の度合いを知るうえでも大切です。公益財団法人難病医学研究財団・難病情報センターのwebサイトの「皮膚筋炎・多発性筋炎」のページ(指定難病選定委員会資料2014年10月)によれば、診断基準項目は以下の通りです。

  1. 皮膚症状
     (a) ヘリオトロープ疹:両側又は片側の眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑
     (b) ゴットロン丘疹:手指関節背面の丘疹
     (c) ゴットロン徴候:手指関節背面および四肢関節背面の紅斑
  2.  上肢又は下肢の近位筋の筋力低下
  3.  筋肉の自発痛又は把握痛
  4.  血清中筋原性酵素(クレアチンキナーゼ又はアルドラーゼ)の上昇
  5.  筋電図の筋原性変化
  6.  骨破壊を伴わない関節炎又は関節痛
  7.  全身性炎症所見(発熱、CRP上昇又は赤沈亢進)
  8.  抗アミノアシルtRNA 合成酵素抗体(抗Jo-1抗体を含む)陽性
  9.  筋生検で筋炎の病理所見:筋線維の変性及び細胞浸潤

皮膚筋炎は「(1)の皮膚症状の(a)~(c)の1項目以上を満たし、かつ経過中に(2)~(9)の項目中4項目以上を満たすもの。なお、皮膚症状のみで皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するものは無筋症型皮膚筋炎とする」とあり、「多発性筋炎は(2)~(9)の項目中4項目以上を満たすもの」とされています。

 

皮膚症状の「ヘリオトロープ疹」などはすでに記事2「皮膚筋炎・多発性筋炎の症状」で説明いたしました。

この診断基準に新たに加わったのが「無筋症性皮膚筋炎」です。皮膚症状だけを有し、皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するもので、筋炎のない「アミオパチック(非筋障害性)DM(皮膚筋炎)」と、検査上筋炎所見が軽度で筋力低下がないclinically amyopathic dermatomyositis(CADM)に分類されます。診断基準項目の(8)も新しい項目です。

もともと抗ARS抗体(抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体)のうち抗Jo-1抗体は多発性筋炎・皮膚筋炎患者の10~20%で陽性でしたが、抗PL-7抗体など7つの抗ARS抗体が多発性筋炎・皮膚筋炎の患者から見つかりました。抗PL-7,12,KS抗体陽性例では、筋症状が比較的少ないとか、逆に抗PL-7,12,KS、EJ抗体陽性例では、抗Jo-1抗体陽性例に比べて間質性肺炎の頻度が高いことがわかりました。

多発性筋炎・皮膚筋炎の発症とこれらの抗体の因果関係はわかっていませんが、この病気で間質性肺炎が合併すると致命症になることがありますから、多発性筋炎・皮膚筋の患者さんにこれらの抗体が見つかったときは間質性肺炎が起こらないように気をつけたほうがよいでしょう。

診断項目を念頭に置いていただきながら多発性筋炎皮膚筋炎血液検査についてみていきましょう。

筋肉の中にある酵素です。筋肉の組織が炎症によって破壊されると、血中に流れ出てくるために増加します。具体的には「CK(クレアチンキナーゼ)」「アルドラーゼ」「ALT」「AST」「LDH」などです。

筋肉を構成するタンパク質の一種で、これも筋肉の組織が破壊されると血中で増加します。

体内で炎症による刺激や細胞の破壊が生じると増加する「C反応性たんぱく」の量を測定します。

人間の身体は免疫反応によって自分に害を与える物質を攻撃するために「抗体」をつくりますが、自分自身を攻撃する自己抗体をつくってしまうことがあり、これが膠原病の発症に関係してきます。このため血液中の自己抗体を調べます。自己抗体には、本症以外の疾患でも出現するものと、筋炎特異(関連)自己抗体のように筋炎の病型や病態、臨床経過、治療反応性と密接に関連するものがあります。前者の代表としては抗核抗体が後者の代表としては抗ARS抗体があります。

生活をするために必要な基本的動作について調べる検査です。例えば、腕をあげる・上着を脱ぐ・髪をとかす・蛇口をひねる・ボタンをかける・ベッドから起き上がるなどの動作が対象になります。多発性筋炎皮膚筋炎の場合は「四肢近位部」という身体の中心に近い四肢の付け根の部分の筋力の低下を中心に検査します。

これまで紹介した検査のほかにも機器をつかった検査などがあります。

「上腕を水平に保つ」「足先を上げる」などといった動作に対して、医師や理学療法士・作業療法士が患者に手で抵抗を加えて、その反応で各部の筋力を0(まったく動かない)~5(普通に動く)までの6段階で評価します。

筋力低下の原因が筋肉自体によるものなのか、神経原性の変化によるものなのかを区別するために行う検査です。筋肉が活動したときに出現する微量な電気変化を測定します。筋肉内の炎症が高度であるときは、脱神経電位を伴うことがあり、疾患の活動性の判定に、役立ちますが、そのほかはいわゆる筋原性変化が分かるのみで、多発性筋炎皮膚筋炎特有の確実な診断方法にはなりません。

筋肉の炎症部位や程度がわかることがあるため、筋生検をする部位の選定や治療効果の判定が期待できます。

筋炎の診断を確定するために行われる検査です。筋電図やMRI検査で異常のあった筋肉の一部を手術的に採取し、特殊な方法で染色し顕微鏡で観察します。多発性筋炎では筋内膜の付近にCD8陽性の細胞障害性T細胞(リンパ球の一種)、皮膚筋炎では血管の周囲にCD4陽性ヘルパーT細胞(同)などが多く確認されます。筋生検は、特定疾患の申請には必須の検査ではありませんが、診断や病像把握には必要な検査です。

 

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