インタビュー

角膜感染症の原因とは-コンタクトレンズの不適切な使用に注意

角膜感染症の原因とは-コンタクトレンズの不適切な使用に注意
水流 忠彦 先生

国際医療福祉大学 教授

水流 忠彦 先生

この記事の最終更新は2016年03月10日です。

砂や植物が眼に当たったり、コンタクトレンズを不適切に使用してしまうことで、眼の表面に傷ができることがあります。眼球のうち黒目の部分を「角膜」と呼びますが、外の世界と直接接する角膜上皮に傷ができることをきっかけとし、細菌やウイルスなどに感染してしまう眼疾患を「角膜感染症」といいます。本記事では、角膜感染症はどのようにして引き起こされるのか、国際医療福祉大学病院眼科教授の水流忠彦先生にお伺いしました。

角膜の構造
角膜の構造

角膜とは、一般的に「黒目(くろめ)」と呼ばれている厚さ約0.5mmの透明な組織のことを指し、光を眼内に取り入れるとともに屈折させて網膜に像を結び付けるレンズの役割も担っています。

角膜は表面から順に、上皮・ボーマン層・角膜実質・デスメ膜・内皮の5層から成りたっており、健康な人の角膜上皮は十分な涙で覆われ保護されています。

また、外界と直接接している角膜上皮は、皮膚と同じように活発に代謝を繰り返しており、再生能力が高い組織でもあります。そのため、角膜に小さな(軽度の)傷がついたとしても、眼や身体が健康な状態であればその多くは自然と治っていきます。

しかし、何らかの誘因によりできた角膜の傷口から細菌やウイルスなどが侵入してしまうと、眼痛や結膜充血、視力低下などを主症状とする「角膜感染症」に進展してしまうことがあります。角膜感染症を引き起こす誘因には、ゴミや砂、植物(枝や葉)が眼に当たることによる外傷、コンタクトレンズの不適切な使用、ドライアイ(涙の分泌量の不足)、免疫を抑制するステロイド薬の長期点眼などが挙げられます。

角膜感染症の誘因の中でも多いのは、コンタクトレンズの過装用や連続装用など、“不適切な使用”です。

1dayや2weekタイプと呼ばれる使い捨てのソフトコンタクトレンズを「頻回交換レンズ」と呼びますが、これを使用期限を超えて使い続けてたり、正しく洗浄・消毒を行わず装用することは、角膜にとって大きな負担となります。また、コンタクトレンズをインターネットで購入して、眼科での定期検査を受けていないといった患者さんも見受けられます。

ハードタイプとソフトタイプのコンタクトレンズのいずれでも角膜感染症の原因とになり得ます。一般にハードレンズの場合は痛みを感じやすいため早期に眼科を受診される方が多いのに対し、ソフトコンタクトレンズでは痛み等の症状が出にくいため、感染に気づかずに進行させてしまうことが多いようです。

また、涙が不足した角膜の上にコンタクトレンズを装用している場合、角膜感染症のリスクは更に上がるため、ドライアイと診断されている方はコンタクトレンズの使用に慎重になったほうがよいでしょう。

(関連記事:ドライアイとは https://medicalnote.jp/contents/150908-000016-KQTLCW )

角膜感染症を引き起こす病原体は下記の4つに分類され、病原体ごとに症状や治療法、治りやすさは大きく異なります。

【角膜感染症の起炎菌】

●細菌…緑菌や黄色ブドウ球菌、肺炎球菌など

●真菌(カビ)…酵母菌(カンジダ属)や糸状菌(アスペルギルス属)など

●アカントアメーバ…水中に生息する原虫(微生物)

ウイルス・・・単純ヘルペスウイルスと帯状ヘルペスウイルス

元来、健康な眼表面には多数の常在菌(普段、人に害をなさない細菌や真菌)が存在し、様々な感染防御機構も働いているため、角膜上皮に病原体が付着しただけでは角膜感染症は成立しません。ここまでに述べてきたように、外傷や免疫能の低下などの誘因があってはじめて、感染が成立するのです。

 

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