インタビュー

真菌性角膜炎とは-長期間の治療が必要な角膜感染症

真菌性角膜炎とは-長期間の治療が必要な角膜感染症
水流 忠彦 先生

国際医療福祉大学 教授

水流 忠彦 先生

この記事の最終更新は2016年03月13日です。

角膜感染症のうち、原因となる病原体が真菌(カビや酵母など)のものを「真菌性角膜炎」といいます。真菌性角膜炎は、カンジダ属などの酵母菌によるものと、アスペルギルス属などの糸状菌によるものの2つに大別することができ、それぞれの真菌が感染症を引き起こす誘因異なります。免疫機構が低下している方に多いといわれる酵母菌による真菌性角膜炎と、農作業や屋外での作業が多い方に多いといわれる糸状菌による真菌性角膜炎、それぞれの違いや治療法、症状について国際医療福祉大学病院眼科教授の水流忠彦先生に解説していただきました。

角膜感染症の原因となる真菌には、酵母型と糸のような細長い形状をした菌糸型、2つの形態があります

真菌とは、大気中のホコリや生活用水の中などに存在するカビや酵母菌などのことを指します。通常は真菌が直ちに感染症を起こす訳ではなく、ホストである私たち人間側の防御機構が何らかの原因により弱体化してしまうことで角膜感染症が引き起こされます。

  1. 酵母型:カンジダ属など
  2. 菌糸型:アスペルギルス属、フザリウム属など

それぞれの真菌がどのように角膜に感染するのか、次項で詳しくみていきましょう。

菌糸型の真菌による真菌性角膜炎の誘因として圧倒的に多いのは、「角膜の外傷」です。とりわけ農作業に従事される方が樹木の枝や草葉で目を傷つけてしまい、真菌性角膜炎になるケースが多く見受けられます。植物にはフザリウム属などをはじめとする多くの糸状菌が繁殖しています。そのため、果樹の剪定を行っているときなどに枝や葉が落ちてきてしまったり、雑草の根元を手作業で刈りとるときに、草の先端が眼に入ってしまうことが発症の契機となっている実例が多々あります。このように、菌糸型の真菌による角膜感染症とは健康な人でもかかることのある眼疾患なのです。

一方、酵母型の真菌は木の枝などに繁殖するものではなく、水の中や食べ物の中に存在しています。そのため、酵母型の真菌による感染症は、眼や体の疾患に対してステロイド薬の点眼や内服をしていたり、糖尿病の方など、免疫機能が低下している患者さんに多くみられます。また、コンタクトレンズの過装用や連続装用が誘因となる場合もあります。

このように、同じ「真菌性角膜炎」といっても、菌糸型の真菌によるものと酵母型の真菌によるものではその誘因が異なっており、区別して考える必要があります。都会と地方、その地の産業など、地域性によってどちらのタイプの患者さんが多くみられるかも変わります。

真菌性角膜炎の症状は、眼痛や結膜充血、眼脂(目やに)などです。症状は細菌性角膜炎と類似していますが、起炎菌を同定するまでの間に使用する抗菌薬が効きにくいという特徴があり、これが診断の一助となることもあります。

(※真菌性角膜炎の治療は「抗真菌薬」で行います。)

このほか、受傷の理由や免疫不全の病歴の有無により、起炎菌の同定前に真菌性角膜炎を疑うこともあります。

真菌性角膜炎細菌性角膜炎と比較して治りにくいという特徴があり、治療には長期間を要します。

また、眼科で使用できる抗真菌薬は世界的にみても限られており、これが治療に難渋するひとつの要因となっています。日本では真菌性角膜炎の治療には、ピマリシンという軟膏薬を塗布するか、点滴用の抗真菌薬を点眼用に調整して点眼するほかに主だった選択肢はありません。症例によっては抗真菌薬の内服薬や点滴を併用することもあります。

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