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インタビュー

悪性リンパ腫の治療-病型によって治療法は異なる

悪性リンパ腫の治療-病型によって治療法は異なる
畠 清彦 先生

国際医療福祉大学三田病院 副院長

畠 清彦 先生

この記事の最終更新は2016年04月01日です。

前の記事「悪性リンパ腫とは。そもそも「リンパ」とは何か?」で、悪性リンパ腫はホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫にわけられることをご説明しました。悪性リンパ腫の病型によって治療法が異なり、最も適切な治療が選択されます。本記事では、それぞれの病型での治療法や、非ホジキンリンパ腫の治療薬の歴史についてがん研有明病院 血液腫瘍科部長 畠清彦先生にご解説いただきました。

ホジキンリンパ腫は主に放射線治療と化学療法のどちらか、あるいはその組み合わせによって治療されます。治癒率は比較的高く早期(I、Ⅱ期)で80〜90%、進行期(Ⅲ、IV期)でも50%程度で治癒を見込めます。

  • 放射線療法

X線を身体の外から照射し、がん細胞を壊して消滅させたり小さくさせます。

  • 化学療法

抗がん剤を経口または点滴で全身に投与し腫瘍細胞を消滅させます。標準的な治療としてABVD*療法が用いられています。

*ABVD療法:4種の抗がん剤(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)を組み合わせた治療法 

  • 大量化学療法+自己造血幹細胞移植

抗がん剤の大量投与と患者さん自身の造血幹細胞移植によって、比較的安全にかつ強力な治療が行えます。抗がん剤の大量投与はがん細胞の消滅に非常に有用ですが、血液の元になる造血幹細胞が死んでしまう危険性があります。造血幹細胞が死んでしまうと白血球や血小板がつくられなくなり、その結果、感染症を起こしたり出血がとまらないという副作用を招いてしまいます。それらを防ぐために、抗がん剤治療の前に患者さんの造血幹細胞を採取して冷凍保存し、抗がん剤投与後に造血幹細胞を戻すという治療を行います。

①B細胞性リンパ腫

リツキシマブ併用のCHOP療法*あるいはCOP療法、HyperCVAD/MA療法*(場合によっては放射線療法を併用)を行います。HyperCVAD/MA療法はマントル細胞リンパ腫、バーキット型リンパ腫に用いられます。その他の血液がんには効果が強すぎること、入院期間が長くなるため用いられる頻度は少ないといえます。

*CHOP療法:3種類の抗がん剤(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン)+副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン)を組み合わせた治療法

* HyperCVAD/MA療法:3種の抗がん剤(シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン)+副腎皮質ホルモン(デキサメタゾン)+高用量メトトレキサート+高用量シタラビンを組み合わせた治療法

②T細胞性リンパ腫

CHOP療法あるいはHyperCVAD/MA療法が導入療法として行なわれます。

③NK細胞性リンパ腫

ステージ初期には放射線治療(RT)とDeVIC*(デビック)療法を併用した、RT+DeVIC療法が行われ、進行例にはDeVIC療法単独またはSMILE療法が行われます。

*DeVIC療法:副腎皮質ホルモン(デキサメタゾン)+エトポシド、イホスファミド、カルボプラチンを組み合わせた治療法

*SMILE療法:副腎皮質ホルモン(デキサメタゾン)+メトトレキサート、イホスファミド、L-アスパラギナーゼ、エトポシドを組み合わせた治療法

CHOP療法は、1970年代にFisherという人物によって開発されました。その後、悪性リンパ腫に対するさまざまな化学療法が開発されましたが、CHOP療法の効果を上回ることがありませんでした。また、CHOP療法が欧米を含め広く用いられる理由には、病院にかかった1日目から外来で治療が行えるというメリットがあるからです。CHOP療法以降に開発された治療法は、CHOP療法より効果が上回るようにと用量を大きくしたために、入院が必要となりました。効果面と外来で行うことができるという面からも、現在もCHOP療法が標準治療の位置付けとなっています。

日本では2000年に、CHOP療法にリツキシマブを組み合わせたR+CHOP療法が認められました。CHOP療法単独よりも奏効率(治療によってがん細胞が消滅もしくは縮小した患者さんの割合)が20%以上、5年生存率が20%改善しました。現在では、B細胞性リンパ腫の標準治療となっています。CHOP療法よりも効果が上回り、かつ副作用がほとんど変わらないため非常に良い治療法といえます。リツキシマブの費用は少し高いですが、CHOP療法で用いる薬剤はジェネリック医薬品などを用いれば値段を抑えることができます。また日本には高額医療費の制度があるので、よりよい治療を受けていただける環境にあると考えます。

ただし、医薬品の後発品*は先発品と全く同じということではないことに注意が必要です。特にバイオ医薬品(抗体医薬*)は、化学合成医薬品と比べて分子量が非常に高く、複雑な構造をしているため、全くの同一のものをつくるのは難しいとされています。ですから、後発品を使用することで先発品ではあらわれなかった副作用がでる場合もあります。いずれにせよ、治療費や副作用に関して医師と相談して治療に臨まれるのがよいと考えます。

*医薬品の後発品:化学合成医薬品ではジェネリック医薬品、リツキシマブのような抗体医薬(バイオ医薬品)ではバイオシミラーと呼ぶ

*抗体医薬:がん細胞の細胞表面の目印(抗原)にピンポイントで結合し、がん細胞を消滅させる薬。ピンポイントでねらい撃ちするため、高い効果と副作用の軽減が期待できる

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