インタビュー

子どもの事故予防―事故を減らすための社会と家庭の取り組み

子どもの事故予防―事故を減らすための社会と家庭の取り組み
山中 龍宏 先生

緑園こどもクリニック 院長

山中 龍宏 先生

この記事の最終更新は2016年04月12日です。

記事2『「事故」という言葉を変える―accidentからinjuryへ』では、子どもの事故は「傷害」であり、予測でき予防可能であることをご紹介しました。それでは、具体的にどのような取り組みをしていけば、子どもの事故は予防できるのでしょうか。これについては、社会と家庭の双方で取り組む必要があります。子どもの事故を予防するためにできること・すべきことについて、緑園こどもクリニック院長の山中龍宏先生にお話しいただきました。

事故は、「事故が起きる前」、「起きたとき」、「起きた後」の3つに分けて考えるのがいいと思います。事故が起こる前は「予防」、事故が起こったときは「救命処置」、事故が起こった後は「治療、リハビリ」となります。最も大切なのは「予防」です。医療機関を受診する前、つまり事故が起こる前段階の取り組みが最重要といえます。

家庭のみで事故を予防するためにできることには限界があります。記事2『「事故」という言葉を変える―accidentからinjuryへ』で述べたように、「24時間目を離さなければ事故は予防できる」「あらゆるものを監視・制限すればリスクが減る」といっても、実際に24時間目を離さないでいたり、あれこれと生活に制限を加えることは不可能です。

家族や周囲にいろいろな負担をかけて予防するのではなく、社会全体で安全に取り組む必要があります。あれも危ない、これも危ないと指摘して、保護者がそれらを認識していれば事故は予防できるといっても、一つ一つ、保護者に守ってもらうのは大変なことです。

それでは、どうすれば社会で事故予防に取り組むことができるのでしょうか。少しの時間、子どもから目を離してもすぐには事故が起こらないような環境を整え、事故が起こらない仕掛けを持った製品を作ることなどが挙げられます。こういう対応をしないと、事故を予防するための根本的な解決策にはなりません。さらにいえば、事故予防として特別に指摘や指導の必要がないような環境や製品を作れば安全が確保されるのです。それこそが真の育児支援となります。

事故予防を考慮するにあたって優先度が高いものは、以下の3つです。

・重症度が高く、後遺症を残す可能性が高いもの

・発生頻度が高いもの

・最近発生件数が増えているもの

すなわち、死亡・入院や、外来受診が必要となるような事故の予防について優先的に取り組む必要があるのです。

たとえば、公園の滑り台の降り場にゴムマットを敷いておく、鉄棒の高さを調節するなどです。自動車では、ぶつからない車(衝突回避機能が備わっている、自動ブレーキがかかる装置がついているなど)が使用されるようになりました。そういう車を使う方が増えれば、交通事故はさらに予防できるでしょう。

歯ブラシによる刺傷では、子どもが転倒した場合でも口の中に大きな力がかからないように工夫された、曲がる歯ブラシなどが開発されています。交通安全のポスターや、歯磨き中の注意事項を書いたポスターが様々なところに掲示されていますが、ぶつからない車や曲がる歯ブラシを使うことのほうが事故の予防に直結するのです。

事故が起きてしまったとき、保護者の方に「子どもの事故の原因は何だと思いますか?」と聞くと、ほとんどの方が「自分の不注意が原因です」とおっしゃいます。遊具で遊んでいたときであれ、車に接触した場合であれ、すべて自分の責任と考えてしまい、事故が発生したときの状況を関連する企業(遊具会社や自動車メーカーなど)に申告することはありません。そのため、企業も行政も事故が起こっていることを知らないのです。

子どもの事故を経験したら、ご自分だけのせいにしないでください。不注意を改善しようと思っても予防につなげることはできません。事故が起きたとき、環境や製品の構造に何らかの不具合があった可能性があることも頭に置いておくことが大事です。

そして、他の子どもが同じ事故に遭わないようにするために積極的に情報を提供してください。やけどしたなら「このような経緯でやけどをした」と状況を詳しく通報することが、同じ事故を繰り返さないことにつながります。視覚的な情報は非常に役立ちます。ケガをした現場やケガの要因になった製品の写真を見せてもらえると、とても有用な情報になります。

情報がなければ、企業も行政も事故が起きていることを認識できません。その事故はお子さん一人だけに起こったものではなく、同じ事故は何百件も起きているのです。事故の実態を把握するために、関係者や専門家に詳細な情報を提供していただきたいと思います。

自動車事故チャイルドシートを使用、妊婦さんもシートベルトを使用

スマートカーの使用

自転車事故ヘルメットの着用、子どもを乗せるときは最後・降ろすときは最初に

溺水の事故浴槽での事故が多いため、2歳以下の子どもがいる場合は残し湯をしない

子どもだけで入浴させない

浴槽のふたは厚くて硬いものを使用する

転落事故ベビーベッドの柵は常に上げ、足がかりから柵の上部まで50㎝以上を確保

やけど湯漏れ防止機能付きの電気ケトルを使用する

蒸気が出ない炊飯器を使用する

蒸気が出る加湿器を使用しない

誤飲、窒息セーフティーキャップのついた薬用瓶を使用

誤飲チェッカーで物の大きさを確認し、口径39mm以下のものは1メートル以上の高い場所に置く

など

●コラム:それぞれの月齢において重症度が高い事故とその対策

0〜4か月児:チャイルドシート、うつぶせ寝、転落

5〜9か月児:チャイルドシート、誤飲、転落

10〜12か月児:チャイルドシート、誤飲、やけど

1歳代:チャイルドシート、風呂での溺水、やけど、転倒・転落

2歳以降:チャイルドシート、窒息、転倒・転落、自転車用ヘルメット

 

★「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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