インタビュー

胃潰瘍の検査と診断-原因の特定、胃がんとの鑑別のために行うこと

胃潰瘍の検査と診断-原因の特定、胃がんとの鑑別のために行うこと
山根 建樹 先生

国際医療福祉大学 教授、国際医療福祉大学塩谷病院 消化器内科部長

山根 建樹 先生

この記事の最終更新は2016年03月23日です。

胃潰瘍には、ピロリ菌と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)によるものがあり、どちらが原因となっているかによって、治療法や再発のリスクは大きく変わります。そのため、検査により胃潰瘍の原因を特定し、正確に診断をくだすことは非常に重要です。本記事では、胃潰瘍が疑われる際に行う検査の詳細を、国際医療福祉大学塩谷病院消化器内科部長の山根建樹先生にお話しいただきました。

胃潰瘍の診療においては、まずピロリ菌によるものか、NSAIDsによるものかを見極めることが大切です。そのため、問診では患者さんの病歴・薬剤服用歴を取りこぼしないよう丁寧にきいていきます。

採血などによるピロリ菌検査は、内視鏡検査前に行うと保険適用外になってしまうため、検査の第一段階で原因を見極めるためには、この問診が最も重要であると考えます。

内視鏡検査は、胃潰瘍の進行度や傷の深さなどを最も正確に把握できる検査です。症状が似ている胃がんなど他疾患との鑑別も内視鏡検査により可能です。技術の進歩に伴い内視鏡の精度が向上したため、かつて行われていたバリウム造影検査を行うことは、現在ではほとんどなくなりました。

内視鏡検査では、小型カメラがついた管を口(または鼻腔)から挿入し、咽頭や食道、胃、十二指腸の下行部までの消化器官を隈なく観察します。胃潰瘍と併発することがある十二指腸潰瘍などもこの時点で診断することができます。

内視鏡検査では後述する病理検査のための検体採取も行われ、出血がみられる場合には止血処置も施行されます。

【内視鏡的止血術】

止血処置には、

  • エピネフリン添加高張食塩水(血管を収縮させる。間質を膨らませ血管を圧迫する)や純エタノール(血管を凝固壊死させる)などの薬剤を用いた局所注入法
  • アルゴンプラズマ照射による組織凝固法
  • クリップにより血管を把持絞扼する機械的止血法

など、様々な方法があります。

これらの処置を行っても出血が止まらない場合は外科的手術や血管造影による止血処置を行うことになりますが、胃の出血においては内視鏡的処置で止血できるケースが9割を超えています。

内視鏡検査時に潰瘍辺縁部の組織を採取(生検)し、病理検査に出します。胃潰瘍の検査における生検は、潰瘍と「胃がん」の鑑別のために大切であり、活動性の出血がない患者さんであれば必要に応じて行われます。

採取する組織は1mm程度と小さく、また、胃粘膜には知覚神経が存在しないため、検査時や検査後の痛みはありません。内視鏡検査時に採取した胃生検組織は、次項で述べるピロリ菌検査で使用することもあります。

ピロリ菌感染の有無を調べることは胃潰瘍の患者さんにとって重要です。主な検査方法としては、血液検査と迅速ウレアーゼ試験などがあります。

血液検査では、ピロリ菌抗体(HpIgG)を測定します。

迅速ウレアーゼ試験は、採取した胃生検組織を試薬内に入れるという検査で、試薬の色調変化からピロリ菌が存在しているかどうかを確認します。

ピロリ菌感染の検査は、ほかにも病理組織学的検査や尿検査、便検査、尿素呼気試験などがあります。血清抗体測定やウレアーゼ試験などでピロリ菌に感染しているかどうかの見極めが難しい場合は、最も精密な尿素呼気試験などを行います。尿素呼気試験は精密ですが、コストが高く患者さんの負担が大きくなってしまうため診断目的では初めから行わない方が効率的です。なお血液検査以外のほとんどの検査は、PPIという薬剤の影響により「偽陰性」となることがあるため、PPI を服用されている患者さんは2週間以上休薬していただく必要があります。

 

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