インタビュー

自己免疫性肝炎の治療——副腎皮質ステロイドの投与

自己免疫性肝炎の治療——副腎皮質ステロイドの投与
石橋 大海 先生

国際医療福祉大学 名誉教授、福岡山王病院 非常勤、柳川療育センター 施設長

石橋 大海 先生

この記事の最終更新は2016年04月12日です。

自己免疫性肝炎の治療の基本は薬物療法です。治療の開始が早ければ効果は高く予後は良好ですが、治療が遅れると効果は低くなります。福岡山王病院で難治性疾患の治療に取り組む石橋大海先生に、自己免疫性肝炎の治療についてお話を伺いました。

自己免疫性肝炎は、中年以降の女性に好発する難治性の肝疾患で、英語表記のAutoimmune hepatitisの頭文字をとってAIHとも略されます。患者数については正確な数値はわかりませんが、日本国内におよそ1万人と推定されています。自覚症状が現れないこともあるため、肝硬変や肝不全などに進行してから診断されることも少なくありません。

薬が非常によく効くため、早い段階から治療を開始すれば予後(病気や治療などの見通し)は良好です。副腎皮質ステロイドに抵抗性がある場合には必ずしも予後が良いというわけではありませんが、副腎皮質ステロイドの投与によって多くの場合、肝障害を示すASTGOT)やALT(GPT)といった数値が基準値内に改善されます。

ただし、治療の開始が遅れた場合の有効性は低下し、また治療の中止後にはおよそ80%の割合で再燃がみられますので,副腎皮質ステロイドは長期に服用する必要があります。

治療薬である副腎皮質ステロイドは、発症時に0.6mg/kg/日(30~40mg/kg)以上を目安として内服をスタートします。1錠は5mgですので、1日に6~8錠で開始して、時間をかけながら維持量といわれるところまで薬の量を減らしていきます。病状が重い場合は0.8mg/kg/日以上で内服を開始します。治療薬は、基本的に生涯服用しなければなりません。

薬による副作用を最小限に抑えるためです。副腎皮質ステロイドによる重い副作用としては感染症や糖尿病骨粗鬆症や消化性胃潰瘍、精神障害などが知られていますが、こういった副作用をできる限り起こさせないことが重要になってくるからです。

また副腎皮質ステロイドは、体内でも副腎皮質ホルモンとして産生されていますが、体外から副腎皮質ステロイドが投与されると、体内でホルモンを産生しなくなってしまうのです。副腎皮質ステロイドホルモンは血圧を上げるなど、からだの維持にとって重要な役割をしているため、体内で産生されなくなると非常に困ったことになるわけです。

副腎皮質ステロイドは9割の患者さんで有効性が示されています。肝機能の状態をみながら徐々に薬の量を減らしていくわけですが、検査数値が安定する最低量のステロイドを維持量として長期間内服します。

副腎皮質ステロイドの減量にあたっては、同じ肝臓疾患で難治性の肝疾患のひとつである原発性胆汁性胆管炎PBC)(2016年、原発性胆汁性肝硬変から病名が変更されました)の特効薬であるウルソデオキシコール酸を併用することがあります。ウルソデオキシコール酸はそのほかにも軽症な患者さんに対して単独で使用することもあり、特に高齢者や糖尿病があって副腎皮質ステロイドが使えないといった場合に使用されています。

副腎皮質ステロイドに抵抗性があったり、合併症や副作用のため副腎皮質ステロイドが使用できなかったりする場合には、アザチオプリンという薬を投与することもあります。

一方、発症時から黄疸が出るなど非常に重症な場合には、ステロイドパルス療法といって、メチルプレドニゾロンなどによる大量のステロイド療法や肝補助療法として血漿交換や血液濾過透析といった特殊治療を行うこともあります。場合によっては、肝移植が必要となることもあります。

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