インタビュー

自己免疫性肝炎の治療に伴う副作用と合併症

自己免疫性肝炎の治療に伴う副作用と合併症
石橋 大海 先生

国際医療福祉大学 名誉教授、福岡山王病院 非常勤、柳川療育センター 施設長

石橋 大海 先生

この記事の最終更新は2016年04月12日です。

自己免疫性肝炎の治療は副腎皮質ステロイドの内服が基本となりますが、ステロイド投与による副作用への対策は治療を行う上でとても大切です。福岡山王病院で難病治療に取り組む石橋大海先生に、自己免疫性肝炎治療における副作用と合併症についてお話をうかがいました。

副腎皮質ステロイド投与が治療の第一選択になり、多くの場合プレドニゾロンという内服薬が使われます。日本における自己免疫性肝炎の予後(病気や予後の見通し)については、10年生存率が95%と非常に良好で、適切な治療を受けた場合には、病気ではない人と生存率に変わりはないことが報告されています。

しかし、治療薬を内服しても血清トランスアミラーゼが正常値にならなかったり、再燃を繰り返したりするような場合においては、肝硬変から肝不全へと移行したり、肝細胞がんの発症が高まるといった例も報告されています。治療にあたっては、血清トランスアミラーゼの値を基準値内に維持するようステロイドの量をコントロールすることが重要となります。

まずは0.6mg/kg/日(30~40mg)以上からスタートします。1錠は5mgなので1日に6~8錠程度から開始します。症状が中等症以上の場合には0.8mg/kg/日以上で内服を開始することもあります。内服を始めると1か月程度で血清トランスアミラーゼ値であるASTやALTの値が正常化してきます。

ステロイドを投与することで多くの患者さんが効果を示す一方で、 副作用を心配する方がおられるのも現状です。副腎皮質ステロイドによる副作用としては、満月様顔貌(ムーンフェース)や脂質異常症消化性潰瘍骨粗鬆症のほか糖尿病といったものがあります。患者さんの病状に応じて副作用に対する予防薬を投与することもできるので、自己判断で中止することがないよう注意が必要です。

治療薬であるステロイドは、副腎皮質という人間のからだの中でも作られているホルモンで、体外から投与されると体内でホルモンが作られなくなることがあります。副腎皮質ホルモンは、からだの血圧を上げるなど、からだの維持にとって非常に重要な役割を持っているため、ホルモンの産生が止まるとからだにとってダメージとなるわけです。そのため、できる限り少ない量で最大限の効果を出せる維持量を見極めることが必要となります。

合併症については、肝硬変へと進行して肝細胞がんを発症させたりするほか、他の自己免疫性疾患、例えばシェーグレン症候群関節リウマチ、慢性の甲状腺炎などを起こすことがあります。

つまり、薬を一生飲み続ける必要があるということです。ただし、トランスアミラーゼ(ASTやALT)の値や免疫グロブリンの値が完全に正常化し、なおかつ肝組織での炎症が画像上消えれば、内服を中止する可能性もないわけではありません。

 

副腎皮質ステロイドの種類

商品名

1錠量

ヒドロコルチゾン

注射剤

コハク酸ヒドロコルチゾン

注射剤

プレドニゾロン

5mg

メチルプレドニゾロン

4mg

コハク酸メチルプレドニゾロン

4mg

デキサメサゾン

0.5mg

ベタメサゾン

0.5mg

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