インタビュー

ジストニアの今後について

ジストニアの今後について
平 孝臣 先生

三愛病院 脳神経外科

平 孝臣 先生

この記事の最終更新は2016年04月14日です。

患者さんを思うがゆえの手術法は「記事5:ジストニアの熱凝固手術について」でお伝えしました。ここでは、ジストニアを取り巻く現状と今後について東京女子医科大学 脳神経外科の平孝臣先生にお話し頂きました。

字を書く以外の動きは問題ないのですから、医師の立場からすると医学的な知識では説明がつかないのです。 ですから、患者さんの精神的な問題に収めてしまうわけなのです。

実際には、1980年代の初めには「書痙」は脳の中の回路の問題であるとわかっているのですが、30年以上経った現在でも、極度の不安神経症と定義づけ、催眠療法・心理療法で治そうとされる方もいます。そのため、外科治療で治せる病気なのに、精神的に問題があるとして、患者さんが偏見にさらされているのは事実です。

ジストニアは原因が不明な場合が多くを占めるので、新しい画期的な薬が生まれることはこの10~20年はないでしょう

30年前と同じ薬を今も使っていますが、投薬だけでは治りません。

手のジストニアの場合A型ボツリヌス毒素製剤の注射を行うことが主流ですが、日本では手のジストニアには保険は適用されません。また、A型ボツリヌス毒素製剤を使うとなると、どこの筋肉に注射すべきか細かく調べなければいけないですし、注射を過度に行うと手が動かなくなってしまいますし、細かい機微が求められる非常に難しい治療です。そのため、医師はしっかりと勉強しないといけないので、A型ボツリヌス毒素製剤の注射をしてくれる医師は非常に限られてしまっています。また例えば書痙の場合、A型ボツリヌス毒素製剤の注射を行うと現在に比べ約40~50%症状は改善されますが、根本治療ではないので100%改善されることはありません。

この治療法は1024個のエレメント(超音波が出る機械)が付いたヘルメットを患者さんがかぶり、MRIの中に入ってもらい、アプローチしたい部位に向けて超音波を照射することで、部位が熱凝固を起こし症状を改善させるという治療法です。ジストニアだけではなく、パーキンソン病・振戦も治療可能です。  

まずは振戦の治療で2年前から臨床研究を始めようやく終わったところです。現在、国際共同研究を行っていますが、論文発表の最後の段階であり、倫理委員会によって書痙・音楽家ジストニアに適用してもよいと審査が通過したところです。この治療法についての改良点はまだありますが、期待できる治療法であると思っています。 

ジストニアの外科的治療は大変難しいので、医師はかなり勉強しないといけません。また、治療にはリスクを背負います。ですから、志願される医師も少ないのが現状です。また、原因不明な病気であるため、ジストニア自体を知らない医師も多いです。この2点がネックとなりジストニアの外科手術に携わる医師が、数を数えるくらいしかいません。

実際我々は、治療を待っている患者さんのために、休日を返上して治療を行っています。しかし我々のリソースにも限界があります。医療の仕組みを変えないと現状も変わらないままでしょう。我々医師と患者さんが共に、環境の改善を少しずつでも行っていくべきであると思います。

今でも内科的治療がバックボーン基本であるというように考えられていますが、それでは症状は完全には改善されませんし、患者さんも満足されません。ジストニアの治療には外科的手術治療が不可欠です。「患者さんを治したい。良好な経過をたどって欲しい。」そのために私はあえて外科治療を行い続けているのです。

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