インタビュー

ペインクリニックを受診した患者さんの実際

ペインクリニックを受診した患者さんの実際
井関 雅子 先生

順天堂大学 医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 教授 (大学院医学研究科疼痛制御学 教授併任)

井関 雅子 先生

この記事の最終更新は2016年04月17日です。

記事4:ペインクリニックにおける治療方法」ではそれぞれの患者さんに適した治療方法について詳しくお伝えしました。では実際にどのように治療を行っているのか、順天堂大学医学部附属順天堂医院 麻酔科学・ペインクリニック教室 教授の井関雅子先生にお伺いしました。

例1

MRI検査で椎間板ヘルニアと診断され、坐骨神経痛もあり急性痛で、原因もはっきりしている患者さんがいらっしゃって、薬物療法に抵抗があったので、硬膜外ブロック(脊椎の中にある硬膜外腔という空間に局所麻酔剤などを注入することで、注入した領域の神経の痛みや炎症を和らげる治療)の治療を提案しました。初診の時は体も動けず精神状態もよく無かったのですが、患者さんのお話しを聞いた上で治療を行ったところ、体だけではなく精神状態も回復されました。

「心と体は一体化している」とはまさにこのことで、「痛み」が原因で、ふさぎ込みがちになっていた「気持ち」が、痛みが緩和されたことにより元気をとりもどすことができます。

例2

末期の直腸がんの患者さんで詩を書いている方がおられて、死ぬまでに詩集を完成させたいが、オピオイドを使うと頭がぼんやりしていい詩が作れないということで、硬膜外カテーテル(硬膜外腔にカテーテルを留置し持続的に局所麻酔剤を投与すること)留置を行い、詩集を完成させ、亡くなられた方もいらっしゃいました。

例3

腰椎術後の坐骨神経痛をお持ちの患者さんがおられて、最初は診察に1時間もかかったのですが、今ではもう5分で終わるようになりました。初診時には、長引く痛みですっかり気持ちの元気がなくなり、夜も眠れない、不安が強い状況でした。そこで、しっかりと患者さんの訴えを受けとめるよう務めました。その後、患者さんも安心感を持って頂けたことで、治療意欲も湧き、医師と患者さんの意思疎通もスムースにできるようになりました。また、散歩など日常生活の中に運動療法を組み入れいたことで、自己効力感を強く持たれるようになりました。術後6か月経っても術後痛で悩まれる方は多く見受けられます。

例4

右肺を全摘出された患者さんが、術後3か月して診察にこられました。痛みはVAS100(これまで経験した一番強い痛み)という、これ以上ない痛みを抱えておられました。

腕も上げられず、夜も痛みで眠れず、破局的思考(記事3参照)をお持ちでした。私は、術後肺がんの再発はなく、良い経過であること・術後痛はよく起こること・体を動かさないと、固まってしまって、より痛みも強くなることをお伝えしました。安心感を持って頂くと同時に、予後に関する説明も丁寧に行ったのです。

実際には薬物療法を行い、痛みはゼロでは無く半分以上ありますが、夜は眠れるようになり、外出、旅行と生活の巾も広がり、今は2か月に1回の診察ですむようになりました。

記事4:ペインクリニックにおける治療方法」」でもお伝えしましたが、様々な治療を組み合わせることで、できるだけ副作用を少なくして治療効果をあげることも有用です。また、最終的には、痛みが和らいでくれば、投薬も神経ブロック療法もできるだけやめていく方向が理想です。それぞれの患者さんの生活スタイルに合った治療法を行い、日常生活のプラスになるのが一番良い治療法であると思います。

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