インタビュー

網膜剥離の手術

網膜剥離の手術
大路 正人 先生

滋賀医科大学眼科学講座 教授

大路 正人 先生

この記事の最終更新は2016年04月16日です。

網膜剥離の治療法には、症状や進行度合いによって手術法が異なります。初期の場合は、網膜光凝固術を行い、進行している場合は網膜復位手術と硝子体手術のいずれかを選択します。それぞれの手術の適用やその内容について網膜硝子体疾患のスペシャリストである滋賀医科大学眼科学講座教授の大路正人先生にお話をしていただきました。

レーザーを当てることによって網膜と網膜色素上皮の間にわざと熱傷を起こし、癒着させることによって孔をふさぎます。いわば糊付けするようなものです。

実は私自身も15年ほど前に飛蚊症が突然増えたのを自覚し、同僚に見てもらったところ網膜剥離であることが判明しました。私の場合、早期に発見できたため網膜光凝固術を行い、治療することができました。手術は短時間で終わり、痛みもほとんどありません。

 網膜剥離が進行してしまっている場合は、はがれた網膜を元の位置に戻す手術を行います。外側から行う網膜復位術と硝子体手術の2種類があります。

網膜の外にある強膜(きょうまく)という組織の外側にシリコンスポンジを縫いつけて、眼球を内側に凹ませます。これによって、剥離した網膜を網膜色素上皮に近づけ、間にたまった液体を外に追いだします。たまった液体が多い場合には、強膜側から針のような穴をあけて外に出します。その上で冷凍凝固という方法で網膜と網膜色素上皮に凍傷を起こしてくっつけます。強膜を内側にへこませるので、強膜内陥術とも呼んでいます。

私が30年前に研修医で勤務していたころはほぼ網膜復位手術をしていましたが、近年は硝子体手術が取って代わりつつあります。網膜復位手術と比べ確実に接着でき、複数の孔が開いている場合に見落としが少ないことがその理由として挙げられます。

硝子体手術は、眼の中に吸引カッターと呼ばれる器具を差し込んで、硝子体の内部にたまっているゼリー状の液体を吸引して除去します。その後、眼球内に人体に無害なガスを注入して液体を空気に置き換えることによって、剥離していた網膜が網膜色素上皮に押さえつけられた状態にして、レーザーを使って網膜と網膜色素上皮の間を接着させます。ガスはその後1週間から2週間で吸収され、毛様体から出される水分に置き換わります。重症の場合、ガスの代わりにシリコンという油を入れる方法もあります。ずっと押さえつけた状態を維持するため確実に接着させることができる一方、シリコンは吸収されずにずっと眼の中に残るため合併症を引き起こすこともあるため、多くの場合1~2ヵ月後にシリコンを取り除く手術が必要となります。

 状態や年齢によって手術の方法を変えますが、当院では9割以上が硝子体手術を行っています。手術をした方のうち1割弱は網膜が元の位置に戻らず、再手術をする場合もあります。

硝子体手術を行うと、白内障が進行してしまいます。白内障は水晶体が濁って視力が低下してしまう病気で、特に50歳を超えた方は、半年から1年で大半が白内障になります。このために硝子体手術の後、すぐにまた白内障手術を行わなければなりません。そこで硝子体手術の際に同時に予防的に、水晶体を眼内レンズ(人工の水晶体)に置き換える白内障の手術も同時に行います。

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