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インタビュー

白血病の薬物治療

白血病の薬物治療
園木 孝志 先生

和歌山県立大学医学部附属病院 血液内科学講座 教授

園木 孝志 先生

この記事の最終更新は2016年04月23日です。

白血病は一般に治療が困難な病気であると考えられていますが、その種類によっては非常によく効く薬剤があります。慢性骨髄性白血病に使われるチロシンキナーゼ阻害剤や、急性前骨髄性白血病に使われるオールトランス型レチノイン酸(ATRA)によって、白血病の治療は大きく変わってきました。しかし、今もなお白血病の薬物治療は抗がん剤を使ったTotal cell kill(トータル・セル・キル)による地固め療法が基本となっています。白血病や悪性リンパ腫など「血液のがん」を専門とされている和歌山県立大学医学部附属病院血液内科学講座教授の園木孝志先生に、白血病の薬物治療についてお話をうかがいました。

これを慢性骨髄性白血病やフィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ性白血病の治療に用います。それからもうひとつはオールトランス型レチノイン酸(all- trans retinoic acid:ATRA)です。これは急性前骨髄性白血病に使われています。他にもいくつかの薬がありますが、革新的、つまり白血病の治療にイノベーションを起こしたのはこの2つです。

治療前の患者さんの体では白血病細胞が非常に多くなっており、正常細胞は少ない状態です。そこへ強力な抗がん剤治療を行うと、正常な細胞も白血病細胞も一気に減り、その後回復して増えてきます。ところが回復のカーブは正常細胞のほうが早く立ち上がります。そしてまた抗がん剤治療を行うと、白血病細胞は正常細胞に比べると戻るのが遅いので、下図のようなカーブになります。これを繰り返すことによって、少しずつ白血病細胞が減っていきます。

Total cell killの概念
Total cell killの概念

このように、白血病細胞のほうが正常細胞と比べて回復が遅いという、その差を利用して正常造血をどんどん高めていくというのがTotal cell kill(トータル・セル・キル)の考え方です。

では、最終的にはどのようにして治癒に至るのでしょうか。これはまだ完全に解明されたわけではありませんが、最期には患者さん自身の免疫が白血病細胞を完全に殺してしまうのだろうと考えられています。おそらく正常な免疫細胞は白血病細胞を退治する能力を持っているのですが、白血病細胞があまりに多いと免疫細胞が効かないのです。ですから、白血病細胞がある程度少なくなるとおそらく免疫細胞の出番がやってくるのではないかと考えられています。このように、白血病細胞のほうが正常細胞と比べて回復が遅いという、その差を利用して正常造血のほうをどんどん高めていくというのがTotal cell kill(トータル・セル・キル)の考え方です。

正常な白血球が減ると感染症を起こしやすくなりますので、それに対しては抗生物質を適切に使うことが重要になります。また、正常な赤血球が減れば赤血球輸血、血小板が減れば血小板輸血が必要です。感染症を防ぐために無菌室に入っていただくなどの対応は、以前はかなり厳しく行っていましたが、現在ではかなり緩やかになっています。

移植といっても造血幹細胞を輸血のように点滴するだけです。この治療には移植片対宿主病(いしょくへんたいしゅくしゅびょう:GVHD)などといった多くの合併症があるので、この治療ができるかは年齢や体の状態をみて判断しています。

がん剤で治らなかった患者さんたちがこの治療で治ることも十分ありえます。

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