インタビュー

慢性期頚動脈完全閉塞症(CTO)に対する血管内再建術『フローリバーサルメソッド』

慢性期頚動脈完全閉塞症(CTO)に対する血管内再建術『フローリバーサルメソッド』
寺田 友昭 先生

昭和大学藤が丘病院脳神経外科 教授

寺田 友昭 先生

この記事の最終更新は2016年04月24日です。

以前はすべての症例でバイパス手術の対象となっていた頚動脈の完全閉塞症に、現在では血管内治療が適応されるようになっています。頚動脈の完全閉塞症とはどのような病気なのでしょうか。その特徴と治療法について昭和大学藤が丘病院脳神経外科教授の寺田友昭先生にお話をうかがいます。

頚動脈は、頚部にある脳に血液を流すための太い血管です。頚動脈は、外頚動脈、内頚動脈、総頚動脈の3本から成りますが、動脈硬化の影響でその頚動脈がつまって細くなる病気が「頚動脈閉塞症」です。CTO患者さんで脳血流の低下がある場合、放っておくと脳への血流が十分に供給されず、それが進行すると閉塞しCTOになります。

ここでもっとも注意が必要なのは、冠動脈や四肢末梢血管とは大きく異なり、頚動脈は脳へ血液を送る重要な血管であるという点です。万が一脳の血管がつまってしまうと脳梗塞を引き起こすため、治療でステントなどを入れる際にも、血管の壁にできたプラークが頚動脈より先の脳の血管へ飛ばないようにする必要があります。そのため、下記のような方法で治療が行われます。

<バルーンを使用する>

治療中、血管内でバルーンを膨らませて末梢へ流れる血流を遮断して止めてしまう方法。プラークや血栓は吸引カテーテルで回収する。

<フィルターを使用する>

末梢へ流れる血管の先にフィルターを置いてプラークや血栓がそこで引っ掛かるようにする方法。最後に器具と一緒にフィルターごと回収する。

<フローリバーサルメソッド>

内頚動脈の血流を逆転させて血栓やプラークが末梢へ流れていかないようにする方法。頚動脈狭窄(閉塞)のもっとも新しい治療方法。

完全につまってしまった血管は、どこまでプラークや血栓の壁が続いているかわかりません。頚動脈の血流は心臓から脳に向かって流れており、カテーテルが内頚動脈の末梢に抜けて血管が開通した瞬間にプラークと血栓がそのまま脳に飛んでしまう可能性があります。内頚動脈は完全に塞がっているため、カテーテルを通す前に血管の先にあらかじめフィルターを設置しておくこともできません。

そこで、血流の方向を変えて血栓やプラークが飛んでいく方向そのものを変えてしまおうと考え出されたのが「フローリバーサルメソッド」です。外頚動脈と総頚動脈にバルーンを置き、本来の血流の流れを遮断して総頚動脈に挿入したカテーテルの中枢側を静脈にシャントします。すると、頚動脈の血液は、より圧力の低い静脈の方へ自然に流れるようになります。この方法を用いて、治療中に発生したプラークや血栓を静脈側に設置したフィルターで回収します。こうすることにより「脳に血栓が飛んでしまう可能性」を解消でき、完全閉塞症の患者さんでも安全に血管内治療を選択できるようになりました。

※シャント・・・血液が本来流れるべき血管ではないルートを通る状態。

フローリバーサルメソッド
フローリバーサルメソッド 緑色の矢印が血流。一番右の状態ではフローリバーサルメソッドによって流れる方向が変えられている(イラスト:寺田先生ご提供)
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