インタビュー

お酒の適量はどのくらいか

お酒の適量はどのくらいか
高後 裕 先生

国際医療福祉大学病院 消化器センター長/予防医学センター長、国際医療福祉大学 医学部教授

高後 裕 先生

この記事の最終更新は2016年04月24日です。

みなさんは、自分がお酒に強いか弱いかについての自覚がありますか? また、どのくらい飲めば「飲みすぎ」といえるのか、すなわち適正飲酒量を知っている方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。自分の体質や適正飲酒量を知っておくことはとても大切です。国際医療福祉大学病院の高後裕先生にお話をうかがいます。

飲酒の習慣は、おそらく何かの契機があって始まると考えられます

それがストレスの方もいれば、日本では夕方になって仲間うちで飲む習慣もあるため、それが悪習慣につながってしまう方もいらっしゃるかもしれません。実際に、日本全体としてお酒の消費量は減っていますし、単純に「ストレス社会だから」「仲間うちでよく飲むから」アルコール障害が露呈し始めたとはいえないでしょう。

日本人はお酒が飲める方と飲めない方がはっきり分かれています。そのため、飲める方の場合、一人あたりの飲酒量は欧米をしのぐほどに極めて多いことがわかっています。また、日本にはお酒が入手しやすいという背景もあります。

では、どのくらいの飲酒量が適切なのでしょうか。これを考えるうえで、「適正飲酒(量)」という概念があります。「そこまでならばお酒が健康に障害を与えることはないだろう」という量を定める考え方です。毎日この適正飲酒量を超えて5年、10年と長期間にわたって飲酒を続けると、健康を障害すると考えられています。日本の場合、日本酒が基準になっています。いわゆる「普段普通に飲める」という一般的な方で、一度の適正飲酒量は「日本酒の1合」を基準としています。

適正飲酒量 日本酒1合(1合=180ml

日本には「常習飲酒家」と「大量飲酒家」という概念があります。常習飲酒家は毎日3合以上飲む方、大量飲酒家は毎日5合以上飲む場合と定義されていますが、5合以上飲む方はかなりアルコール依存症の傾向が強いといえるでしょう。では、3合ならばOKかというと、近年それも多過ぎるのではないかといわれています。しかし、1合というと下の図程度の量になります。「今日は飲みに行く」あるいは「金曜だから夜は家で一杯やろう」となった時に、この1合よりも超えない方は日本にどのくらいいるでしょうか。実際には、3合程度は問題なく飲めてしまう方のほうが多いのではないでしょうか。

適正飲酒量の基準 日本酒1合分のイメージ

お酒は「度数」ではなく「アルコール分の絶対量」で考えてください。アルコールの絶対量とは、自分が飲むお酒に「アルコールがどれぐらい含まれているか」ということです。たとえば、水割りで飲んでもロックで飲んでも、中に含まれているアルコール分の量が同じであれば同じということになります。先に、「適正飲酒量は日本酒で1合」と述べましたが、これはアルコール量に換算すると1日20~40グラムということになります。

一度に摂取するアルコール量の適正はおよそ20グラム

ただし、極めて度数の高いウォッカなどの場合は、アルコールが通った場所に炎症が起こり、さらにそこから発がんする確率が高いことがわかっています。極めて度数の高いお酒は消化器官への直接的な影響が強いため、海外の強いお酒はたとえ適正アルコール量だとしてもあまり推奨できる種類ではありません。

<摂取してよいアルコール分の計算方法>

アルコール絶対量(g)=

        容量ml(そのアルコールの液体量) × アルコール濃度%(度数÷100) × アルコール比重0.8

(例)

今日飲みたいお酒はウイスキー(度数43%)。シングルを1杯作ると…

30ml × 0.43 × 0.8 = 10.32g 

この場合、摂取するアルコール量は約10グラムということになる。つまり、今日飲んでいいのは最低で2杯。

※「30ml(=30g)」という数字はウイスキーの原液の量を指す。30mlは、カクテルを作る際に使われる三角錐型のメジャーカップの小さいほうの分量。大きい方は45ml。この時、どんなに水割りの水が多くてもロックで飲んでも「30g分のアルコールが入っている」ことに変わりはない。
お酒の種類ごとの適正量

お酒に含まれているアルコール量が多くなればなるほど、それに伴って消化器に与える影響も大きくなります。極端に大量に飲んだ場合、吐血をするなど消化器の急性の症状が発生することもあります。

日本のお酒、特に焼酎や泡盛などには単位あたりのアルコール量が多いという特徴があります。これは、適正摂取量を算出する時には特に注意が必要だということです。上記図の量を適正量とすると、「自分はお酒が飲める」という日本人の方は基本的に「飲みすぎ」ということになります。

焼酎は他のお酒に比べ単位あたりのアルコールの量が1.5倍

 

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