インタビュー

西洋医学への漢方の導入

西洋医学への漢方の導入
並木 隆雄 先生

千葉大学医学部附属病院 和漢診療科 科長(診療教授)

並木 隆雄 先生

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この記事の最終更新は2016年04月28日です。

千葉大学医学部附属病院の診療科のひとつである「和漢診療科」は、西洋医学と東洋医学の両方の長所を活かして最善の治療を目指すという和漢診療学の考えに基づいて診療を行っています。西洋医学と漢方の違いやそれぞれの長所を活かした連携について、千葉大学医学部附属病院診療教授・和漢診療科長の並木隆雄先生にお話をうかがいました。

東洋医学の診断というのはあくまでも五感を活かした診断ですので、どうしても限界があります。しかし、西洋医学とはまた違った細かい診察や所見がとれます。ですからそれを使った東洋医学的な診察と西洋医学の最先端機器を駆使した診断をあわせて行うことで、西洋医学の診断だけではとらえられないような細かい変化を見つけることができるのです。

和漢診療学の前提として、西洋医学は特に診断の部分において東洋医学にまさっていますので、診断については必ず西洋医学の診断をしてもらうようにしています。私自身も元々は循環器内科医でしたから、西洋医学の中で行われる診断については熟知しています。それを踏まえた上でさらに東洋医学の診察・診断を加えて処方を出すということを行っています。

最近は西洋医学の医師でも漢方薬を使っている先生がいらっしゃいますので、漢方薬を使って症状の改善をされることも多くなりました。しかし複雑な病状を持った患者さんについては、漢方の専門医でなければ難しい場合があります。そのような患者さんが千葉大学医学部附属病院に紹介されて来院されたり、あるいはこの病院内の各診療科から和漢診療科に紹介されてこられるということが多々あります。

そうすると、もぐら叩きのように色々なところを叩いて(治して)いかなければならないため、薬も複雑になります。あちらを立てればこちらが立たずというように相反する状況も生じますので、複数の症状をカバーできる漢方薬でも治療が難しい場合があります。したがって、本来の形としては病気が悪くならないうちに、体質改善も含めて漢方薬で治すことが望ましいのです。

また、治しきれない症状が残っている方には、その残っている症状をとるために漢方薬を使うということもよくあります。

例えば他科で診ている患者さんで、主な病気は治療でよくなっているものの、いわゆる冷え症がなかなか治せないという方がいらっしゃいました。西洋の薬でも冷え症を治す薬はあるのですが、残念ながら効かない方も多いのです。そのようにして我々の和漢診療科に紹介される患者さんのうち、実際に冷え症の症状が改善されている方はかなりいらっしゃいます。

命にかかわるような病気は西洋医学で治し、生活の質を上げるような薬は漢方で対応するというのがひとつの理想的な形であり、実際にそうなっている方もいらっしゃいます。しかしそれは我々が西洋医学と東洋医学の両方を熟知しているからこそできることです。もし十分な知識がなければ両者が合わさることで逆の方向に働くこともありえます。そのような場合に対応を誤らないためには、やはり漢方専門医がいなくてはなりません。

【並木隆雄先生の著書】

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