インタビュー

鼻水を抑える薬は何がある? 薬の効果と適応基準について

鼻水を抑える薬は何がある? 薬の効果と適応基準について
片岡 正 先生

かたおか小児科クリニック 院長

片岡 正 先生

この記事の最終更新は2016年05月11日です。

2006年頃から、鼻水に対して処方されていた薬の正しい効能や副作用が見直されるようになり、特に抗菌薬に対する考え方は変化しています。不用意に薬を使わず、本来子どもが持つ治癒力に重きを置いた治療方針を掲げる、かたおか小児科クリニック院長の片岡正先生にお話をうかがいます。

私は、特に3歳以下の子どもには鼻水止めの薬を処方しないようにしています。それは、鼻水を止める薬としてよく処方される抗ヒスタミン薬は本当の意味で「鼻水を止める」という役割を果たしていないと考えるからです。

<鼻水が分泌される2つのメカニズム>

・アセチルコリンが鼻尖(びせん:鼻の先端)に作用して鼻水を分泌する:風邪などのときの鼻水

・ヒスタミンがアレルギー反応を起こして鼻水を分泌する:アレルギー性鼻炎の鼻水

*アセチルコリン、ヒスタミンは体の中で働く化学物質で、それぞれが多様な反応を起こしています。

従来からよく鼻水止めとして処方されている第一世代の抗ヒスタミン薬は、上記2つのメカニズムを抑える働きを持っていますが、特にアセチルコリンの作用抑制を目的として使用されていました。

アセチルコリンの作用を抑えると、鼻尖から出る水分の量が減り、鼻水も減ったように感じます。しかし実際には、鼻尖から出る「水分」の量が抑えられただけであり、「鼻水」自体が止まったわけではありません。

鼻尖から出る水分量が抑えられるということは、体のほかの臓器から出る唾液、尿、汗などの分泌も減らしてしまいます。そのため、口渇感や、水気のない鼻水だけが残って取れにくいなどの副作用も生んでしまいます。つまり、抗ヒスタミン薬の使用は鼻水の根本的な治療とはいえないのです。

また、抗ヒスタミン薬は脳にも作用するため、眠くなったり、けいれんを起こしやすくなる可能性があることも知られています。抗ヒスタミン薬のメリットとデメリットを比較すると、少なくとも「鼻水を止める」という目的のみでは使用しないほうが得策なのではないかと考えています。

(関連記事:『こどもが起こす「熱性けいれん」とは?』

ただし、子どもの鼻水の原因がアレルギー性鼻炎である場合は、抗ヒスタミン薬の使用が有効となります。薬を使用する目的が「鼻水を止める」ことではなく「アレルギーを抑える」ことだからです。現在、アレルギー性鼻炎の治療目的で処方される抗ヒスタミン薬は第二世代・第三世代と呼ばれる新しい薬で、第一世代と呼ばれる古い薬よりも喉の渇きや眠気、脳への副作用などが起きにくいよう改善されています。

ただし、先に述べたようにアレルギーが原因で鼻水が出ている場合はアレルギー反応を抑える必要があるでしょう。また、ウイルスや細菌感染が原因で鼻水が出ている場合は、状況に応じてウイルスや菌を殺す薬(抗生物質・抗菌薬)を使う必要があります。しかしそれらは「鼻水を止める」ことが目的ではなく、「鼻水を出している原因を抑える」ことが目的です。子どもがつらそうにしていると心配になる気持ちは十分理解できますが、受診の際には「治療が必要な鼻水かどうか」を診断してもらうことを心がけるようにしましょう。

上記の理由から、「鼻水が出ているから」「咳が出ているから」といって、市販薬を自己判断で選んで飲ませることもあまりおすすめできません。

 

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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