インタビュー

病気の子どもに対する手術を成功させるために―チーム医療の重要性

病気の子どもに対する手術を成功させるために―チーム医療の重要性
小森 広嗣 先生

小森こどもクリニック 院長、東京都立小児総合医療センター外科 元医長(診療科責任者)

小森 広嗣 先生

この記事の最終更新は2016年06月06日です。

東京都立小児総合医療センターは、生まれつきの難治性疾患を抱えた子どもたちに対する高度専門医療において高い実績を持ち、特に気管狭窄症に対する気管形成術では全国一の症例数を手がけています。子どもに対する手術を成功させるためのさまざまな取り組みについて、外科の診療科責任者である医長の小森広嗣先生にお話をうかがいました。

東京都立小児総合医療センターでは、たとえば気管がむくんで呼吸がうまくできなくなれば、集中治療科(ICU)の医師が速やかに人工心肺を取り付けてその時期を乗り越えるようにします。さらにリスクがあれば、早めに人工心肺を動かして手術の傷が治るまでしっかりと診ることができます。

こうした連携は患者さんが搬送されるところからすでに始まっています。北から南まで、医師がヘリや救急車で現地に行って患者さんを評価し、連れて来て我々外科が手術をします。術後に呼吸が不安定になれば集中治療科の医師が即座に人工心肺を回して、我々が再び傷の処置をするというような形で、ひとりの患者さんを助けています。

この方法はもちろん外科だけでは不可能です。内部にバックアップ体制があり、コミュニケーションがしっかりと確立していなければなりません。それぞれの立ち位置がきちんとわかっていて、そこを補い合えるような仕組みが必要です。

東京都立小児総合医療センターに統合される前、私がいた東京都立清瀬小児病院の時代からそういった連携はあったのですが、統合後は規模が大きくなってより強化されています。統合して組織が大きくなることには強みと弱さの両面があり、連携の難しさが問題になることもあります。統合直後はいくぶん不安定な時期もありましたが、幸いなことにこの施設は風通しがよく、それぞれの持ち分を踏まえてしっかりと話し合いができる組織になっています。

連携は搬送から始まり、術前・術中、そして心臓外科とのコラボレーションもあります。患者さんの術後をみていくということについても段々成熟してきていますので、連携をよりよくしていくのは本当に大切なことだと考えています。

外科とICU(集中治療科)は、所属こそ異なるものの同一グループとして現地へ向かっており、広い意味で「集中治療チーム」「気管チーム」と呼んでいます。また、看護部・手術室・麻酔科など各部門が連携して良好な関係ができています。

搬送のリスクもあるため、まずこちらから医師が泊りがけで現地へ行って、患者さんを診て評価します。その上で搬送が可能であれば患者さんをこちらに連れてきて、その後のプランもすべて立てておきます。たとえば手術をする場合としない場合、気管の手術のみ行う場合と心臓を一緒に手術する場合、そのどちらを先に行うのかなども、ケースによって煮詰めていかなければなりません。

これまででもっとも遠距離のケースでは、香港から患者さんを連れてきたことがあります。もし現地で呼吸が不安定になったときは、外科的な処置をしなければならない場合も考えられます。それがたとえチューブ1本の気管挿管であったとしても、外科医が必要な場面もあるため、そのときは私も同行させていただきました。

このように、現地に複数部門のスタッフからなるチームで患者さんを診に行き、不測の事態にも備えつつ安全に連れてくるという体制をとっているのは、それくらいの人的投資と連携がなければ先天性疾患の難治な患者さんは救えないと考えているからです。

より重症な領域、たとえば心臓に複数の先天異常がある複雑心奇形(ふくざつしんきけい)を合併していたり、あるいは染色体異常の子どもあっても、やはりできるだけ救命したいという思いがあります。そのためには全体のレベル、管理や手術法を洗練させるとともに、引き出しをより多くしなければならないと考えています。

もうひとつ重要なことは、治療にたどりついていない患者さんを救うことです。おそらく潜在的な患者さんはもっと多く、中には治療にたどりつく前に亡くなっている方もいると考えています。

疾患の認知が広がれば気づける可能性があるのですが、先天性気管狭窄症は小児科医の中でもまだ十分に知られていない病気です。患者さんやそのご家族など、一般生活者の方に知っていただくことはもちろん重要ですが、医療関係者の皆さんに気管狭窄症という疾患をより正しく知っていただきたいと考えています。

 

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