インタビュー

肩におけるスポーツ障害

肩におけるスポーツ障害
今井 晋二 先生

滋賀医科大学 整形外科学講座 教授

今井 晋二 先生

この記事の最終更新は2016年05月18日です。

野球で肘の次に傷みやすいのが肩です。肩のスポーツ障害は選手生命を大きく左右することになりかねず、とくに早期の予防が大切です。肩のスポーツ障害のうちリトルリーグショルダー、関節唇損傷、インピジメント症候群について滋賀医科大学整形外科学講座教授の今井晋二先生にお話を伺いました。

上腕骨の端側には成長軟骨があり、縦軸方向に伸びることによって腕が長くなります。ところが投球時に成長軟骨にひねりや遠心力などが高頻度・高負荷でかかると亀裂が入り、骨端線(=成長軟骨)損傷を起こします。投球によるスポーツ障害として起こるのが、リトルリーグショルダーといわれており、大人になると起こらなくなります。診断は単純レントゲン(図6)で行います。治療は安静が基本であり、投球を休みます。

図6.リトルリーグショルダー

一方、転落などの外傷による急性骨端線損傷では、三角巾や固定装具などをつかって動かないようにします。固定して約3週が経過したら運動療法を開始します。元通りになるまでは3~6カ月といわれています。骨端線(=成長軟骨)が縦軸方向に伸びることによって腕が長くなります。ですからスポーツ障害としての骨端線損傷、すなわちリトルリーグショルダーでも、外傷による急性骨端線損傷でも、骨端線障害後の成長障害で将来的に上肢が短くなることがあります(図7)。

図7.上腕骨近位骨端線障害後の成長障害

一方、大人になると肩関節の周囲を補強するじん帯や筋肉、腱などの障害により痛みが発生します。特に大人で発症しやすいのが関節唇(かんせつしん)損傷です。これは上腕骨と肩甲骨の間に存在する軟骨が損傷する病気で、プロ野球選手のほか、やり投げなどの投擲選手にも見られます。これも治療は安静が基本ですが、損傷がひどく痛みが続く場合には手術を行います。内視鏡を使って断裂した関節唇を元の位置に生体吸収性の釘でくっつけます。

肩ではインピジメント症候群があります。肩の筋の通り道である肩峰下腔(けんぽうかくう)と呼ばれる部分があります。肩峰は肩の最も上の部分にある楕円形の突起です。肩には、肩を安定させるために重要な筋肉があります。これら筋肉は肩関節を前後から支える回旋腱板と呼ばれる腱で、肩関節を安定させています。この回旋腱板が弱くなって上下にぶれて肩峰と衝突(=インピンジ)することによって痛みが生じます。肩を酷使するスポーツ(テニス、野球、バドミントン、ゴルフなど)で徐々に痛みを起こすことが多く見受けられます。ガラスのエースと呼ばれた野球元中日ドラゴンズの今中慎二投手はこの疾患により引退を余儀なくされました。

インピジメント症候群の治療としては肩峰の前下方部分の骨を切除し、傷んだ腱板(=腱板部分損傷)を内視鏡で修復します。一般の方のインピンジメント症候群とこれに伴う腱板部分断裂は、現在の治療方法でよく治ります。しかし以前、読売ジャイアンツの原辰徳前監督は「どこに怪我をしても必ず治しなさい。ただ肩だけは手術をしても復帰が難しい」という趣旨の発言をしていたことがあります。それほど肩のスポーツ障害は選手生命を絶つ可能性を持っており、早期に予防対策を打っておくことが大切です。

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