インタビュー

女性の一生を通じての予防医学とは

女性の一生を通じての予防医学とは
麻生 武志 先生

東京医科歯科大学 名誉教授

麻生 武志 先生

この記事の最終更新は2016年06月11日です。

近年、女性の社会進出や社会的役割の変化に伴い、女性の「身体」にも変化の波が押し寄せています。超高齢社会が進む中、女性が健康に過ごすには何に気を付ければいいのか、東京医科歯科大学名誉教授 麻生武志先生にお話しをして頂きました。

超高齢会において、高齢女性に特有な骨粗鬆症動脈硬化症、心筋梗塞脳梗塞認知症尿失禁などの発症に、reproductive age(生殖可能な年代)の産婦人科疾患(無月経早発閉経、早発卵巣機能不全妊娠高血圧症候群妊娠糖尿病多嚢胞性卵巣症候群、など)が深く関連しています。

「女性医学」は「婦人科腫瘍学」「周産期医学」「生殖内分泌学」の3つの柱を連結するマトリックスとしての「総合医療」として、女性の一生を通しての予防医学の視点に立った、これらの疾患を発症前からその経過を観察し健全な老化を促すことで、高齢女性のquality of life (QOL)の向上を図ることをミッションとします。この「女性医学」を実践し発展させるとは日本産科婦人科学会の指針となっています(日本産科婦人科学会女性ヘルス委員会:2011年6月ホームページより抜粋)。

日本女性の平均寿命が約86歳になっていますが、その人生にはいくつかの節目があります。

生殖に関連する最初の節目は思春期です。思春期に入り初経を経て妊娠・出産・育児が可能になる性成熟期に入り、そして50歳前後の閉経を挟だ10年間に当たる更年期に至り、その後に老年期を迎えます。

閉経年齢は人種や時代による変化は殆どありませんが、初経年齢は時代と共に早くなっています。従って、女性の健康管理では思春期・性成熟期・更年期・老年期全体おける心身の変化を視野に入れた全人的な対応を行うことが重要になります。

女性ホルモン・エストロゲンは思春期に急激に増え、性成熟期には一定のレベルを保ちますが、閉経を迎える50歳前後になると急激に減少します。この変化は女性の健康問題と密接な関係があります。女性のライフサイクルにおいてホルモンが健康に及ぼす影響は大きく、多くの病気はホルモンの変化を伴うといっても過言ではありません。このような性ホルモンの変化と身体の変調は男性には顕著に見られませんので、この女性に特有な変化を男性も十分に理解して共に健康問題に向き合い、お互いのQOLの向上を図る必要があります。さらに、近年の女性の社会的進出や役割の変化がストレスや重圧となり、心身に負担をかける機会も増えています。その結果、今までになかった新たな健康問題が現れてくることをも十分に理解した「心と身体を診る」ヘルスケアが重要になります。