インタビュー

乳幼児突然死症候群など子どもの院外心停止について

乳幼児突然死症候群など子どもの院外心停止について
高橋 努 先生

済生会宇都宮病院 小児科 主任診療科長

高橋 努 先生

この記事の最終更新は2016年06月23日です。

院外心停止(CPA)とは、医療機関外で起こる心停止のことをいいます。複雑心奇形(ふくざつしんきけい)で手術をしたお子さんは術後の合併症による心不全不整脈が残る場合があり、小中学生になってから心停止を起こすことがあります。このような子どもたちも大人と同様にAED(自動体外式除細動器)によって命が助かり、社会生活に復帰できることがあります。子どもの院外心停止とAEDの重要性について啓発・周知活動に取り組んでおられる済生会宇都宮病院小児科主任診療科長の高橋努先生にお話をうかがいました。

院外心停止(cardiopulmonary arrest; CPA)とは、医療機関外で起こる心停止のことをいいます。乳幼児突然死症候群のように自宅などで呼吸が止まったり心臓が止まったりすることは、子どもに限らず一定の割合で起こっています。そういった方は多くの場合、救急搬送中や病院到着時に心電図をつけると波形が平らになっています。

心室細動(しんしつさいどう)や心室頻拍(しんしつひんぱく)と呼ばれる状態、つまり心臓がけいれんして心電図の波が残っている場合にはAED(Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器)が使えますが、波が出ていない状態の方はAEDの適応になりません。その場合、心臓マッサージや薬剤の投与によって蘇生を試みるのですが、多くの方は心臓の動きが戻ることはなく、結果的には救急外来に来られて亡くなってしまいます。

しかしその中には、小中学生であっても大人と同様に心室細動・心室頻拍の方が一定の割合で含まれます。その場合、救急車で病院に来る前にAEDによる除細動を行うことができれば、処置が早いほど生命予後がよく、元の生活に戻ることができる社会復帰率も高くなることがわかっています。

そのためには学校にAEDを設置するだけではなく、設置場所や使い方を周知していくことが大切です。たとえば、運動場や体育館など子どもが倒れる頻度が高い場所はどこか、学校の規模や生徒の人数に対してAEDがいくつ必要かなど、考慮すべき問題もあります。学校の保健室に1台あるだけでは、いざというときに間に合わないかもしれません。保健室の先生や体育の先生だけではなく、すべての教職員がAEDの設置場所を知っていること、そして実際に使えるということが必要です。

AEDはBLS(Basic Life Support)と呼ばれる一次救命処置の中で使われますが、その他にも胸骨圧迫(心臓マッサージ)や脈・呼吸の確認などさまざまな手順が適切に行われる必要があります。AEDは胸骨圧迫に替わるものではありませんから、AEDをつけてしまえば胸骨圧迫をしなくてもよいというものではありません。その点の誤解もあってはならないと考えます。

呼吸と心拍を確認して正常な呼吸をしていなければ胸骨圧迫をするという基本動作に加えて、AEDがあれば心電図を解析して電気ショックによる除細動が適応する状態かどうかを判断することができます。AEDは適応する方に対して正しく使ってこそ有効な救命手段となります。その点も広く周知されるべきでしょう。

心臓に複数の先天的な問題が生じている複雑心奇形(ふくざつしんきけい)で手術をした患者さんには、術後の合併症で不整脈を抱えている方が非常に多くいらっしゃいます。不整脈のための服薬や、あるいは残っている心不全の治療が必要になるなどいくつかの残存する問題があり、その中でも不整脈は重要な問題となります。

小さいうちに心内修復術を終えていても心室頻拍で倒れるという方はときどき見受けられます。そういった方が10代前半の小中学校の時期にいきなり倒れると、残念ながらAEDを使っても回復せずに亡くなってしまうことが多く、私自身も何人かそのような経験をしてきました。一方でAEDが作動すると心臓の動きが戻る方も一部いらっしゃるのですが、命は助かったものの神経の後遺症が残ってしまったり、低酸素脳症になってしまったりする方もいらっしゃいます。

そういった状況について、三重大学の三谷義英先生が全国調査を実施されました。病院レベルでそのような患者さんがどれくらいいるのか、AEDの適応になっている患者さんをどれくらい診ているかということを調べたものです。全国から抽出された施設のひとつとして我々も患者さんの情報を提供し、共同研究という形で論文にも掲載していただきました。そのことが私にとってAEDに対する意識を持つ大きなきっかけになりました。

これまでに栃木県小児保健会から依頼されて「小中学生における院外心原性心停止」というテーマで講演を行ったこともあります。学校まで直接出向いて話をする機会はなかなかないのですが、将来的にはそういった活動もしていきたいと考えています。

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